デイサービス運営の中で、定期的にやってくるのが実地指導です。
実地指導は準備に追われるし何か指摘されるんじゃないの?とドキドキして独特の緊張感があったり、不安を感じることもありますよね。
ですが、デイサービスの実地指導についてしっかりと理解しておくことで不安の解消につながります。
そこで今回は、デイサービス実地指導の目的や傾向、実地指導に向けて準備する書類、特に注意する項目などについてお伝えしていきます。
実地指導当日の流れや、実地指導が終わった後のことまで書いていきますので、実地指導に不安を感じている方は是非ご覧ください。
デイサービスの実地指導を行う目的
まず初めに、デイサービスに実地指導が入る目的についてお伝えします。
デイサービスに関わりのある行政からの通常の指導には実地指導と集団指導があります。
集団指導
メモ
行政の管轄内の介護事業所に一斉に同じ内容の説明をします。
簡潔に言うと「国や行政ではこういうルールでやるから、みなさん認識を共有しておいてくださいね」という趣旨
実地指導
メモ
介護事業所個別に対して行われる
簡潔に言うと「集団指導で説明した内容や、関連する法律からあなたのデイサービスではここの認識がずれているから直しておいてくださいね」という趣旨
市町村からデイサービス実地指導の通知が届くと「準備しなくちゃいけない、何をしたらいいかわからない」とドキドキしてくると思いますが、実地指導の本来の目的はデイサービスが適正な事業運営ができているかどうか確認するものです。
適正な事業運営ができていない部分に関しては自治体から「適正な事業運営の為にここを直してくださいね」という感じで指導や助言をもらいます。
指導された部分は真摯に受け止め、普段から不安に感じながら運営をしている部分は、実地指導の機会に直接聞いてみることをおススメします。
事業所と自治体間での認識のズレをなくしていくイメージで考えていただくといいと思います。
デイサービスや介護事業所の実地指導はよく、監査と呼ばれることがあります。
デイサービスや介護事業所で行われる実地指導と監査はどのような違いがあるかお伝えしていきます。
デイサービスの実地指導と監査の違い
実地指導が近づいてくると、社内でも「監査、間もなくですね」という声が聞こえてくることがあります。
私は必ず「縁起でもないこと言わないでください。監査なんか入らないですよ。」と笑いながら返しています。
実地指導と監査は類義語として使われることがあります。
しかし、実地指導と監査は根拠となる法令が違えば、行う目的も違います。
実地指導
メモ
適正な事業運営の為の確認で自治体からデイサービスへの指導や助言が主な目的です。
監査
メモ
実地指導を行なったうえで著しい運営基準違反が認められた場合や報酬請求に不正が認められた場合などに行われる。
監査は実地指導よりも重く、自治体がデイサービスに何かしらの処分を行う可能性が高くなります。
監査では、改善命令や改善勧告、従わない場合には指定の取り消しが行なわれる場合もあります。
監査に関しては私の経験の中では受けたことがないですし、その時の雰囲気もわかりません。
普段から健全な運営をしていれば縁のない話ですね。
デイサービス実地指導での指導項目の傾向
デイサービスの実地指導で指導される項目は様々あります。
実地指導の指導項目
- 職員の配置(職員不足の場合、減算をしているか)
- 出勤簿
- 計画書の有無(個別援助計画書・各加算の計画書)
- 非常災害対策計画書の有無(避難訓練を実施しているか)
- 一日あたりの利用定員を超過していないか
- 契約書関連
- ケアプランに沿ったサービス提供ができているか
- 請求に関する不備
- 研修が実施されているか
- 運営のマニュアルは制定されているか
- BCPが制定されているか
- 運営規定や重説、契約書の内容
この他にも、実地指導の指導項目で見られるポイントはいくつかありますが、指導される場合が多い項目は上記のような感じです。
自治体によっては集団指導などで、”実地指導で指導した項目”を伝えている場合があると思いますので、集団指導の資料も確認してみてください。
この中で実地指導で、私が特に注意深く見られるようになったと感じる項目が赤字で示した項目です。
詳しく説明していきます。
計画書の有無(個別援助計画書、各加算の計画書)
恐らく、多くの事業所が実地指導に向けて多くの確認作業を費やすのが計画書の有無ではないでしょうか。
計画書の中でも特にデイサービスにおいては、加算関係の計画書が重点的にみられるようになっています。
ここ最近の法改正でデイサービスの加算の種類は増えていますし、計画書を作成するために居宅訪問を義務化している加算もあります。
国が「デイサービスはただの集いの場ではないんだよ」と警告している証拠ですね。
デイサービスは基本報酬や入浴介助だけでは生き残れなくなっているということです。
ざっくりいうとデイサービスは加算を算定することで、利用者の在宅限界を高めるという役割が明確化してきたということです。
各自治体はデイサービスに役割をしっかりと担ってもらうために、加算関係の書類は重点的に見ますし不正受給が無いように慎重になっている傾向があるように感じます。
計画書で特に注意しておかなければいけない点が以下の通りです。
計画書の作成ポイント
- 計画書の内容
- 署名や日付を提供日前にもらっているか
- 評価が各加算で決められた間隔ごとに行えているか
- 実施した内容の記録があるかどうか
というところが見られています。
この辺りは重点的に質問されたり、不備があれば速やかに改善するように指導を受けることになります。
請求に関する不備
請求に関する不備はこれまでも一貫して重点的に見られたポイントですが、現在進行形で継続して厳しく見られています。
先ほども少し触れましたが、請求に関しては不正が見つかると、その場で監査に切り替えられることもあり、営業停止や指定の取り消しに直結します。
請求に関しては、あらぬ疑いをかけられることがないように、普段からしっかりと管理しておいてください。
請求に関して整理しておかなければいけないポイントは次の通りです。
請求の注意ポイント
- 国保への請求した金額と事業所(法人)が受領した金額があっているか
- 利用者負担分の料金を事業所(法人)が正確に受領しているか
- 医療費控除対象額を正しく出しているか
- 処遇改善加算の収入分を職員に分配しているか
この中で、私の失敗経験は医療費控除対象額に関してです。
私の知識不足で、全員分の請求書に医療費控除対象額が記入された状態で請求書を渡していた期間が数か月続いていたのです。
ここに関しては行政から「修正が必要な方には説明の文書と修正した請求書を配布しなおしてください」と指導があり、速攻で指導の通り対応した経過がありました。
通常の運営をしていれば不正受給に関しては意図的にやっていない限り、ほぼ心配はいらないでしょう。
ですが、
- 利用者に渡した領収書の事業所控えは全て残っているか
- 利用料金の受領し忘れはないか
- 返戻や請求保留分の説明ができるか
などの細かい部分を確認や整理をしておくようにしましょう。
定期的に研修が実施されているか
定期的に研修が実施されているかどうかも、近年の実地指導では重点的にみられるポイントになります。
特に、介護事業での虐待問題を受けて虐待の疑いがある事業所には抜き打ちで実地指導が行われるようになっています。
抜き打ちの実地指導は自分の事業所では心配ないと思っていても、どこから自治体に報告されるかわかりません。
万が一抜き打ちで実地指導が入ってもいいように、虐待防止や身体拘束廃止に関する研修は計画を立てて計画通りに行っていくという習慣をつけておきましょう。
研修の注意ポイント
- 虐待防止や身体拘束廃止に向けての委員会の運営が適正に行われているか
- やむを得ず身体拘束を行う場合には、個別援助計画書にその項目が盛り込まれているか.
- 虐待防止や身体拘束廃止のマニュアルは制定されているか
などが重点的に見られるポイントです。
研修に関しては、他にも法令で定められているものがありますので、抜けの無いように確認しておきましょう。
その他
ここまでは、近年の実地指導で私が重点的に見られていると感じたポイントをお伝えしてきました。
自治体によっては重点的に見られるポイントが違ったり、まんべんなく見られたりと実地指導の実態は違うかもしれません。
特にコロナ禍においては、BCPが実用的なものとして策定されているかなども重要なポイントになるかもしれません。
ここ最近では、自然災害に対する対策ができているかも重点的に見られるポイントになってきています。
火災だけではなく、地震や水害、風害など様々な場面を想定した計画が立てられ、実際に訓練が行われているかというところも実地指導の担当者から質問される項目です。
では、デイサービスの実地指導に向けて実際にどんな準備を進めていくといいのかお伝えしていきます。
デイサービスの実地指導に向けて準備する4つのこと
さて、デイサービスに実地指導実施の通知が届いたらいよいよ実地指導に向けて準備をしていかなければいけません。
計画書や請求関係書類の準備などに取り組まれることと思います。
デイサービスなど事業所側の心構えとして実地指導では、デイサービス運営の現状を見ていただいたうえで行政からの指導を真摯に受け止めるという姿勢が大切です。
ですので例えば、実際には実施していない加算を誤って請求してしまっていたことに気づいて慌てて計画書を作成してあたかもやっていたかのようにふるまうことは絶対に避けましょう。
一時的なごまかしは、必ず見抜かれて追及されることになります。
正直に「実は実地指導に向けての準備で誤っていたことに気づいてしまいました」と事業所側から話すことで、最小限の指導で済むことにつながります。
では、実地指導当日に向けて具体的にどのような準備をしていくといいのかをお伝えしていきます。
事前提出書類の作成
デイサービスで実地指導が実施される場合には実施の約1週間前までに事前提出が必要となる書類が出てきます。
事前提出として必要な書類として例えば、普段は見ることの無いようなデイサービスの平面図などがあります。
普段から見ることの無いような書類はどこに保管していたか分からないなんて言う場合も出てきますので、間に合うように準備を開始していきます。
他にも、デイサービス内部の写真やデイサービスの事業所情報、利用者の情報を行政指定の書類に落とし込むなど意外と時間がかかってしまう場合が出てきます。
また、書類によってはデイサービスなどの事業所保管ではなく本社保管になっていることもあると思いますので、法人内で連携を取って準備を間に合わせましょう。
当日の準備だけに目が行ってしまって、事前提出が間に合わなくなってしまうということの無いよう準備していきましょう。
当日の人員配置
事前の準備という意味では、当日の人員配置も事前に考えておく必要があります。
デイサービスの実地指導当日は、様々な書類の提出を求められます。
人員や経営、収入に関わる部分は管理者が対応できることが多いと思います。
しかし、個別援助計画書や各種加算の計画書は生活相談員や介護リーダー、看護職員が詳細を把握しているという場合が出てきます。
当日の必要書類も事前に通知されているでしょうから、管理者だけでは説明できない部分は職員が説明できるようにしておきましょう。
説明できる職員を事前に分担しておくことで、実地指導当日は現場職員の入れ替わりが多くなります。
各職種の職員が実地指導に関わっても利用者に迷惑がかかることの無いように実地指導当日は余裕をもった人員配置をしておきましょう。
必要書類の確認
自治体から実地指導の通知が届いていれば、通知の中に必要書類が記載されていると思います。
大まかなところでいうと次のような書類です。
ポイント
- 設備に関する書類
- 人員(スタッフ)に関する書類
- サービス提供に関する書類
- 身体拘束に関する書類
- 非常災害対策に関する書類
- 衛生管理に関する書類
- 相談苦情に関する書類
- 事故やヒヤリハット事例に関する書類
- 請求に関する書類
上記のような分類で書類が必要になります。
それぞれの項目がさらに細分化されますので、なかなかの量の書類が必要になります。
書類が全てデイサービスにそろっていればいいのですが、本社に行かないとない書類などがある場合も考えられます。
まずは事業所で準備できるものか、他の部署に依頼しなければいけない物かの仕分けから始めてみましょう。
事業所で準備できるものは、主に職種ごとで揃える書類の準備や不備の確認を振り分けていくといいでしょう。
不備のあるものはチェックしておいて、今から揃えて問題の無いようなものは揃えていくようにします。
必要書類の仕分け
実地指導に必要な書類が揃ってくると、ほっと一息つきたくなるかもしれません。
しかし、実地指導当日は必要書類を分かりやすいように仕分けしておく必要が出てきます。
仕分けをしていくときのポイントは次の通りです。
注意ポイント
- 段ボールなど大きめの箱に仕分ける
- 実地指導の流れ通りに仕分ける
- メインで実地指導の対応をする職員がわかりやすいように仕分ける
- 段ボールなどに油性ペンで書類の種類を書き込んでおく
実地指導の当日は、流れに沿って行政の職員から次々に書類を要求されます。
そこで一回一回書類を探しているようでは、余計な時間がかかってしまいますし、心証も良くありません。
お互いに気持ちよく実地指導を進められるように必要書類は仕分けしておくようにしましょう。
実地指導当日の流れ
さていよいよ実地指導が始まると、これまでの運営の成果を披露することになります。
実地指導の担当者が来所されるのをソワソワしながら待っておきましょう。
当日に関しては要求される書類を出して、質問されたことに答えるというのが基本的な流れになりますので、準備がしっかりとできていればそこまで緊張しなくても大丈夫です。
自治体からは2名の職員が担当者として来所されます。(3名以内とされているようで、事業所種類や規模によって変動があるかもしれません。)
実地指導の流れは自治体によって違うと思います。
基本的な流れとしては次のような感じです。
実地指導当日の流れ
- 自治体の2名の担当職員それぞれから必要な書類を要求される
- 適宜書類を提出する
- 自治体の2名の担当職員が書類を黙々と確認する
- 2名の担当職員が違和感を覚えた部分は都度質問をされる
- 質問に答える
基本的にはこれがひたすら繰り返されていくという感じです。
途中で現場の確認などもありますので、そこに対して説明する職員も事前に決めておくようにしましょう。
全ての確認が終わると、担当職員同士で指導内容の確認が行われますので、デイサービスや事業所の職員は席を外すように言われます。
しばらくすると、担当職員に呼び戻されますので、今回の実地指導での指導項目や改善内容を聞いて終わりということになります。
最後にデイサービスの運営で不安に感じていることなどは確認することで、自信をもって運営できるようになります。
実地指導が終わった後は何をすればいい?
実地指導が終わると、気が抜けて一気に疲労感を味わう方もいるかと思います。
ですが、実地指導が終わった後にもう一仕事残っていますので力を振り絞って頑張りましょう!
実地指導が終わった後に行うことは次の通りです。
実地指導が終わった後に行うこと
- 指導された内容の確認
- 今後直していくのか、改善の報告が必要か
- 改善が必要な場合は、改善した内容を自治体に提出
主に以上のような対応をしていくことになります。
指導された項目が全くないという優秀な事業所であればこの作業は必要ないのですが、多くの事業所では何かしらの指導がなされていると思います。
特に多いのは重説や契約書、運営規定が現行の法律に則っていないため表現の変更や、文章の追記・修正などです。
このあたりは、改善して提出を求められることがありますので、力を振り絞ってできる限り早いうちに取り組んでください。
まとめ
今回はデイサービスの実地指導についてお伝えしてきました。
今回お伝えした内容をまとめますのでご覧ください。
- 実地指導は運営実態を指導してもらい質の向上につなげるチャンス。
- 慌てて準備して不正とみなされることの無いように普段から整備しておく。
- デイサービスの実地指導では計画書・請求・研修などが重点的に見られる。
- 実地指導に向けた事前準備をしっかり行うことで安心して当日を迎えることができる。
実地指導の通知が来ると焦ってしまうこともあるかと思います。
普段からの書類整備や、事前準備をしっかり行って臨むようにしましょう!