デイサービスでは月末になると、ケアマネージャーに提出する書類の業務を行なうことになります。
その中の1つに、ご利用者1人1人の利用状況報告書があります。
利用状況報告書は生活相談員がせっせと書いたり、介護職員と分担していたりと書き方はデイサービスによって違います。
今回の記事では、デイサービス利用状況報告書に関する次のような悩みを解決していきます。
- 文章の構成が上手く行かない
- 特記することが無くて毎月同じような内容になる
- 何を書いたらいいか分からない
この記事を読んでいただくことで、デイサービス利用状況報告書の構成や書く内容、利用状況報告書に書かないほうがいいことがわかるようになります。
是非最後までご覧ください。
この記事を書いた人
ニックネーム:なひのひ
デイサービス勤務歴:11年以上(生活相談員として9年以上)
デイサービスの生活相談員(兼管理者)として9年以上にわたり利用状況報告書を書いています。
多い時には月に70件以上の利用状況報告書を書いてきました。
今まで書いてきた利用状況報告書の総数は5000件以上。今では他の職員が書いた利用状況報告書の添削もしています。
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デイサービスの利用状況報告書は何故提出するの?
まず初めに、デイサービスの利用状況報告書がなぜ必要なのかについて簡単に解説します。
生活相談員の3つの月末業務の記事でも紹介している通り、利用状況報告書はデイサービス生活相談員の重要な業務です。
規定の中では利用状況報告書は必ず提出しなければいけないという決まりはなく、デイサービスの判断に任されています。
では、なぜデイサービスで利用状況報告書をケアマネージャーに提出する必要か、その理由は次の3つです。
- デイサービスとケアマネージャー間での情報共有
- デイサービス職員のスキルアップ
- デイサービスの信頼アップ
利用状況報告書をケアマネージャーに提出することで、記録が残る情報共有ができますよね。
ケアマネージャーは利用状況報告書を元にして、モニタリングでサービスの利用状況を確認することもあり、見えないところで活用されています。
デイサービスの利用状況報告書では普段の電話連絡では伝えきれないような細かい部分まで情報共有できることも提出が必要な理由の一つと言えるでしょう。
また、利用状況報告書を毎月毎月書くことで、デイサービスの職員はご利用者を観察するクセがつきます。
毎月継続して観察して利用状況報告書に残していくことで観察力や、状況を伝える文字に起こす文章力のスキルアップにもつながっていきます。
デイサービスが利用状況報告書をケアマネージャーに提出することで、担当のご利用者をしっかり見てもらえていると感じてもらうことができます。
継続して毎月提出していくと、利用状況報告書がデイサービスの信頼につながっていきます。
利用状況報告書は提出しないという選択もできるものです。
ですが、大変な思いをして書いてでも得られるものの方が大きいので、書いて提出することをおススメします。
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利用状況報告書の構成は2つのことを組み合わせるだけ!
デイサービス利用状況報告書の書き方で悩むことが多いのは、利用状況報告書に書く内容についてではないでしょうか?
実は、デイサービスの利用状況報告書に書く内容は意外とシンプルで大きく2つです。
- デイサービス利用目的に対しての答え
- ご利用者特有のエピソード
私が利用状況報告書に必ず書いている内容をざっくり分けると、この2つだけですね。
デイサービスではケアマネージャーが作るケアプランを基にサービス提供を行なっています。
ですのでデイサービスにとって重要なのは、ご利用者がデイサービスを利用することでケアプランの目標がどの程度達成されているかということです。
ケアマネージャーも「自分が立てたケアプランが上手く行っているかな?」と気になる部分です。デイサービスの利用目的に対しての答えは必ず書くようにしましょう。
もう一つが、ご利用者特有のエピソードです。ここはデイサービスの職員がどれだけご利用者との関りを持っているかが試される項目です。
ご利用者特有のエピソードを利用状況報告書に入れ込むことで深みのある文章の構成にすることができます。
ここから2つの項目について例文ありで詳しく解説していきます。
デイサービス利用目的に対しての答え(例文あり)
利用状況報告書に書く内容の一つ目は、デイサービス利用の目的に対して答えるということです。
ケアマネージャーが作成したケアプランの目標に対しての答えということですね。
デイサービス利用の目的はご利用者によって様々で、ケアプランには主に次のような利用目的が盛り込まれることが多いです。
- 入浴
- 機能訓練
- 交流
- 食事
- 気分転換
- ご家族の介護負担軽減
利用状況報告書の内容について悩んでいる方は、ケアプランの長期目標や短期目標を見返して『利用の目的に対してどんな状況で過ごされているか』を書いてみましょう。
例えば、入浴目的と交流目的でデイサービスをご利用されている方の場合は次のような書き方ができます。
例文
ご利用時には、毎回入浴をされています。衣類着脱はご自身で行なうことができていますので、職員は見守りを行なっています。洗身動作も先月までとお変わりなく手の届く範囲はご自身で行なっています。
背中や頭頂部は手が届きづらく洗い残しが出る時がありますので、職員の介助で清潔の保持をされています。
交流面に関してですが、お近くのご利用者にご自身から意欲的に話しかける姿はほとんど見られません。ですが、お隣のご利用者から「Aさん、やってみるか?」と声をかけられると笑顔で「うん」と答える姿が見られています。
お隣の方にはご自身から話しかけようとする時があるのですが、話しかけられずに困っている様子も見られます。その時には職員が間に入りながら、お隣のご利用者と交流ができるように関わっています。
デイサービスの利用目的である、入浴と交流に関しての内容が盛り込まれた利用状況報告書になっていますよね。
利用状況報告書には最低でも、デイサービスの利用目的に関しての答えは書くようにしましょう。
ご利用者の状況に合わせて様々な状況が考えられますので、ご利用者ごとの状況を観察した内容を書くようにしてみて下さい。
ご利用者特有のエピソード(例文あり)
そうは言っても同じ目的に対して、毎月毎月書く内容はそうそう変わりはしないよと思いますよね。
その場合にオススメなのが、そのご利用者特有のエピソードを入れるです。
デイサービスの利用状況報告書に、そのご利用者特有のエピソードを入れることで文章に深みが出て読み手も楽しく読み進めることができるようになります。
ご利用者特有のエピソードとは例えば次のようなことを言います。
- ご利用者と職員との会話
- ご利用者同士の会話
- ご利用者の行動の変化
- ご利用者が熱中したこと
そのご利用者特有のエピソードを入れるためには、日々のご利用者との関り方がものを言います。
関わっていなければ特有のエピソードは書けないです。
人見知り生活相談員の記事でもお伝えしたようにデイサービスでのご利用者との関り方の基本は見て・聞いて・触れるです。
デイサービスの利用目的に対しての答えの例文で使用したものをベースにして例文を作ってみます。
例文
ご利用時には、毎回入浴をされています。入浴のお誘いをするといつも笑顔で「ありがとう」と答えてくださいます。
衣類着脱は「できることは自分でやりたいのよ」とおっしゃりながらご自身で行っていますので、職員は見守りを行なっています。洗身動作も先月までとお変わりなく手の届く範囲はご自身で行なっています。
背中や頭頂部は手が届きづらく洗い残しが出る時がありますので、職員の介助で清潔の保持をされています。
16日の入浴時には、珍しくご自身の兄弟のことを職員に話してくださいました。「自分は3人兄妹の末っ子で小さい時には兄2人とよく木登りをして男みたいな生活を送った」と幼少期のことを教えてくださいました。
交流面に関してですが、お近くのご利用者にご自身から意欲的に話しかける姿はほとんど見られません。ですが、お隣のご利用者から「Aさん、やってみるか?」と声をかけられると笑顔で「うん」と答える姿が見られています。
今月は送りの車内で「デイサービスでお隣に座る○○さんはいつも私に声をかけてくれて嬉しい」と話されていたことが印象的でした。
お隣の方にはご自身から話しかけようとする時があるのですが、話しかけられずに困っている様子も見られます。その時には職員が間に入りながら、お隣のご利用者と交流ができるように関わっています。
黄色の線を引いた部分が、ご利用者Aさんとデイサービスでの特有のエピソードですね。
特有のエピソードを入れることで、文章の幅が広がりますしケアマネージャーにもしっかり対応してもらえているという印象を与えることができます。
内容的には同じようなことを書いていても、ご利用者とデイサービス職員などのやり取りが文章に入るだけで毎月の変化を感じる文章を書くことができます。
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デイサービスの利用状況報告書の書き方3つのポイント(NG例や改善例あり)
デイサービスの利用状況報告書は書き方のポイントを押さえることでスムーズに書くことができるようになります。
私は生活相談員経験の中で月に70人以上の利用状況報告書を書いたこともあり、書き方に関してはだいぶ上達したと自負しています。
今では、生活相談員に利用状況報告書の添削もしています
私が利用状況報告書を添削する時に伝える書き方のポイントは3つあります。
ポイント
- 主語を忘れない
- 一文を短く
- 数字を使う
この3つのポイントを押さえるだけで、読みやすさがグンと上がる利用状況報告書を書くことができるようになります。
では、3つのポイントを詳しく解説していきます。
1.主語を忘れない
利用状況報告書を書く時に、意外と抜けてしまいがちなのが主語です。
文章を書く時によく5W1Hを意識して書きましょうと言われることがあります。
5W1Hとは?
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
この中で、意外と抜けてしまいがちなのがWho(誰)。
書き手は頭の中で場面をイメージをしながら利用状況報告書を書いています。その場に誰がいて、どんなことが起こっているのかがわかりながら書いているということです。
そうすると、知らず知らずのうちに『Who(誰)』の情報が抜けやすくなってしまいます。
例えばご利用者A様について書いた、次の利用状況報告書を読んでどのように感じるでしょうか?
NG例
お休みなくご利用されています。15日に受診をされてから座薬が処方されています。入浴後に座薬を挿入しています。
デイサービスでは意欲的に交流され、笑顔が見られます。
A様に関して書いている利用状況報告書なので、A様のことを書いているなというのは分かると思います。
(私は、A様についての利用状況報告書にA様という主語は入れなくてもいいと思っています)
ですが次のことがイメージしづらく、人によって想像する場面が変わるのではないでしょうか?
- 誰と受診に行ったのか
- 誰が座薬を挿入しているのか
- 誰と交流をしているのか
A様以外の登場人物が出てくるときに主語を忘れないというのがポイントですね
主語にポイントを当てて、文章を書きなおすと次のようになります
改善例
お休みなくご利用されています。15日に長女様と受診をされてから座薬が処方されています。座薬は入浴後に看護師対応のもと挿入しています。
デイサービスでは席がお隣になったご利用者と意欲的に交流され、笑顔が見られます。
利用状況報告書に『Who(誰)』を加えただけで、その場の情景が思い浮かぶようになりましたよね。
主語を文章に加えるだけで読み手にイメージさせる情景がまるっきり変わります。
デイサービスの利用状況報告書は書くだけで終わりではなく、読み返してみて違和感を覚えたら主語が抜けていないか確認するクセをつけておきましょう。
2.一文を短く
利用状況報告書の書き方でやってしまいがちなのが、伝えたい複数のことを1文にまとめてしまうことです。
1文が長い文章は読み手からすると、地獄の始まりでしかありません。
ここで言う1文とは書き始めから句点(。)までのことです。
書き手側は頭の中で「これとこれとこれを伝えたい!」と思うと、忘れないうちにバーッと書き上げようとします。
すると、自分でも気づかないうちに1文が長い利用状況報告書が出来上がってしまいます。
1文が長いと次のような原因で読みづらくなるので気をつけましょう。
- その文章で伝えたい要点が分からない。
- 最後まで読む気にならない。
- 主語がぼやける
一文の長さに決まりはありませんが、おおよそ40字程度が読みやすいと言われています。
では、一文が長いNG例の利用状況報告書を書いてみます。
NG例
お休みなくご利用されていますが、15日に長女様と受診をされてからは座薬が処方され、座薬は看護師対応のもと入浴後に挿入し、体調はお変わりなく過ごされていますが、時々疲労感が見られ「ベッドで休みたい」とおっしゃることがありますので、30分程ベッドで休まれることがあります。
極端な例かもしれませんが、すごく読みづらいですよね。この文章は句読点を含めて133字です。
この文章なら、ケアマネージャーは箇条書きで書かれた方がまだマシと思うかもしれません。
この利用状況報告書で伝えたい要点は大きく3つです。
- 休まずに利用していること。
- 受診で処方された座薬を看護師の対応で入浴後に挿入していること。
- 時々疲労感が見られ、30分程ベッドで休まれる日があること。
このように要点としてまとめることができれば、1文が長い文章も要点ごとに区切って書くことができるようになります。
これを踏まえて改善例を挙げてみます。
改善例
お休みなくご利用されています。15日に長女様と受診をされてからは座薬が処方され、座薬は看護師対応のもとで入浴後に挿入しています。
時々疲労感が見られ「ベッドで休みたい」とおっしゃることがありますので、その時には30分程ベッドで休まれています。
自分で読み返してみて、文章の書き始めから句点(。)までが長いなと感じたら一度伝えたい要点をまとめてみるようにしましょう。
3.数字を使う
デイサービスで利用状況報告書を書く時には、数値化できる様々な情報を持ち出すことがあります。
- 体温
- 血圧
- 体重
- 食事の摂取量
- 休んだ回数
これらのことに関して状況を報告する時に、数字を使った時と使わなかった時では読み手への伝わり方が天と地の差ほど出ます。
私が他の職員の利用状況報告書を確認すると、せっかく良い着眼点で書いているのに数字が使われていないことがあります。
数字を使わないがために、伝わりづらい利用状況報告書になっているもったいないケースが多々あります。
例えば次の2つの文章を比較してみてください。
NG例
今月に入り食事の摂取量が少なくなっています。そのせいか、先月に比べると体重の減少が見られます。
改善例
先月は食事を8割程度召し上がっていましたが、今月に入り4~5割程度の摂取量になっています。そのせいか、先月は50kgあった体重が今月は47kgまで減少が見られます。
文章が並ぶと一目瞭然だと思いますが、数字が入った文章の方が説得力がありますよね。
数字を使った文章の利点は説得力だけでなく、具体的な比較ができるということです。
血圧や体温に関しても同じで、数字で伝えることで今までと現在の比較ができるのでケアマネージャーも状況を把握しやすくなります。
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デイサービスの利用状況報告書で『特変無し』はNG!
デイサービスの利用状況報告書を書く時にやらないほうが良いことが一つあります。
それは、『特変無し』と書くことです。私がデイサービスの利用状況報告書の書き方で教えてもらったことでもあります。
「デイサービスで1か月過ごしているのに、何も変化がないわけはないでしょ?」というのが上司の言い分でした。
確かに、利用状況報告書にわざわざ『特変無し』と書くのであれば、書かないほうがマシかもしれません。
ケアマネージャーにわざわざ「私たちはご利用者を見ていません」と報告しているようなものですからね。
同じご利用者の利用状況報告書を2年も3年も書いていると特別な変化を感じなくなるようなこともあります。
ですがデイサービスの職員は、日々ご利用者とかかわりを持ちながら過ごしていることでしょう。
その関わりの中で、利用状況報告書に書ける内容は意外といっぱいあるはずです。
- どんな会話をしたか
- どんな時に笑っていたか
- どんなレクリエーションに参加したか
先ほどもお伝えしたような、ご利用者特有のエピソードを見つけるだけで利用状況報告書の幅が広がります。
書くことが無いと困っても、一か月ご利用者とどんな過ごし方をしたか思い出して何か書くようにしてみてください。
その積み重ねが、文章力の向上やケアマネージャーからの信頼、観察力の向上につながっていきます。
毎月毎月内容を考えて書くのは大変だと思いますが、スキルアップやデイサービスの信頼のために頑張って書いていくようにしましょう!
まとめ
今回は、デイサービスの利用状況報告書の書き方やなぜ必要なのか、書かないほうが良いことについてお伝えしてきました。
利用状況報告書の書き方のポイント3つです。
- 主語を使う
- 一文を短くする
- 数字を使う
利用状況報告書に書く内容は大きく分けて2つです。
- デイサービス利用の目的に対しての答え
- ご利用者特有のエピソード
デイサービスで利用状況報告書を書くには、ご利用者との関り方も重要になります。
利用状況報告書は、ケアマネージャーが利用者のサービス利用状況を知るために大事な情報です。
毎月書くのは大変ですが、特変無しと済ませてしまわないように気を付けていきましょう!
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