デイサービスなどの介護現場ではよく「統一したケアを行いましょう」みたいな言葉を聞くことがありませんか?
なんとなく、響きが良いしそれらしく聞こえるので実は私もよく使う言葉です。
ですが、デイサービスなどの介護現場で使われる統一したケアってすごく曖昧で抽象的な言葉ですよね?
今回の記事では、7枚の画像から“統一したケア”を段階的に具体化できるようにお伝えしていきます。
最初のほうは何を言っているのかわからないかもしれませんが、最後のほうで統一ケアについてつかんでいただけるように書いています。
是非、最後までご覧ください。
統一したケアをしていきましょうがどのくらい抽象的な言葉か感じてみましょう
まず初めに、デイサービスで「統一したケアをしましょう」と言った時に職員がどのくらい抽象的に捉えているのか理解していただきたいと思います。
いきなりですが、次の画像を見て皆さんは何をどこに配置しますか?
ちょっと考えてみてください。
さて、いきなり画像を見せられて、「何をどこに配置しますか」と言われて皆さんはどのように感じたでしょうか?
- 図を理解して配置できる人
- 何となくわかるけど確信が持てない人
- 何をやったらいいか全くわからない人
- 一応適当にやったけど、他の人と同じことができているかわからない人
- フリーズした人
など、様々な状況に置かれている人が生まれたと思います。
これがまさにデイサービスなどの介護現場で「統一したケアをしていきましょう」とだけ言われた時の職員の状態そのものです。
捉え方が人によって違いますし、そもそも何から手を付けたらいいかわからないというような状態の人が生まれている状況です。
ちなみに、今回はデイサービスなどの介護現場における統一したケアについて書いていますので画像も統一したケアに関連する画像です。
では次の項目で、一つだけ情報を加えた同じ画像を見てもらいます。
統一したケアのための自分のポジションを理解していただけると思います。
統一したケアのための自分のポジション
デイサービスで「統一したケアをしていきましょう」と言った時に統一ケアがどれほど抽象的なものかは理解していただけたかと思います。
次に、先ほどと同じ画像に一つだけ情報を加えますので、改めて何をどこに配置するか考えてみてください。
いかがでしょうか?
“自分”を置く位置が決まるだけで、何となく周りにも何かしら人が入るんじゃないかと想像ができた方も多いのではないでしょうか?
では、次にもう一つ情報を加えてみます。
どうでしょうか?
「矢印も使っていいなんて聞いてないよ」と思う方もいたかもしれませんが・・・
それはさておき自分から真ん中の円に向かって矢印を伸ばしました。
矢印は介護現場の統一したケアで使うエネルギーだと思ってください。
統一したケアで自分から何かに対してエネルギーを使うことを示す図になりました。
統一したケアのために、自分は何かにエネルギーを使わなければいけませんよね?
統一したケアのために自分(介護従事者)がいるべきポジションは真ん中の円ではなく、周囲の円の中です。(周囲の円の中でどの位置にいるかは重要ではありません)
では統一したケアのために自分は何にエネルギーを使うのでしょうか?
次の項目でお伝えしていきます。
統一したケアのために何にエネルギーを使うべきか?
もしかすると介護現場の統一したケアでは、このエネルギーの使い道で悩まれている介護従事者の方は多いかもしれません。
この記事をここまで読んでいただいたあなたは統一したケアのために何にエネルギーを使っていますか?
つまり「真ん中の円に何を入れていますか?」という質問です。
ここで、“利用者”や“入居者”と答えた方は残念ながら×です。
もちろん介護従事者としてデイサービスの利用者や入居者という人そのものに自分のエネルギーを使うことは大正解ですし今後も是非是非続けてください!!
また利用者や入居者を理解したいと思う気持ちも真ん中にデイサービスの利用者や入居者が入っている状態ですね。
これは介護従事者のスキルの土台部分だと思いますので、大事にしていただきたいです!!
ただ、人そのものに対してエネルギーを使うということは「その人のことを理解したい」とか「その人のために何かをしてあげたい」というエネルギーの使い方だと思います。
私たち介護従事者は、介護従事者としての専門性をもって仕事をしています。
ですので、統一したケアのためには人そのものではなく、その人の持つ(抱える)何かに向けてエネルギーを使わなくてはいけません。
では、統一したケアのためにあなたは何にエネルギーを使うべきなのでしょうか?
図形に情報を加えますのでご覧ください。
統一したケアのために私たち介護従事者のエネルギーの使い道は、デイサービスの利用者や入居者(クライアント)の課題に対してです。
統一したケアでは、人そのものではなくて、その人の持つ(抱える)課題に対してエネルギーを使っていきます。
デイサービスなどの介護現場では、この辺りが凄くわかりづらいですよね。
ちなみにデイサービスの利用者や入居者の課題に対してエネルギーを使うということは次の図のようなイメージです。
病院に例えると分かりやすいと思いますが、医者は患者(クライアント)の病気(課題)を直すために診察や治療をします。
つまり、医者は患者そのものではなくて患者が抱える課題に対してエネルギーを使っていますよね。
介護現場には自分以外にも、様々な職種の職員が働いていますよね。
自分が円の上にいるのと同じように、他の職員もあなたと同じ立ち位置に存在しています。
例えばデイサービスの介護現場で課題にエネルギーを向けた場合、次のような図になります。
現場レベルでは自分の周りの円の中にはあなたの現場スタッフ(家族等が入る場合もあります)が入ります。
相談員などの職種によっては相談援助の場面でケアマネージャーや主治医、他のサービス事業所などが入ってくることもあります。
介護従事者と利用者は介護する側される側という関係ではないので同じ線の上に居ます。
利用者や家族等も課題解決に向けたチームの一員と思っていただいていいと思います。
ここまでくると統一したケアの内容がかなり具体化されてきたと思います。
数学で言うところの方程式のようなものなので、あとはここに現状を当てはめていくだけです。
ただ、具体例を挙げる前に、次の項目では統一したケアにとても大事なもう一つのことをお伝えしていきます。
統一したケアには自立支援が不可欠
近年の介護現場では統一したケアと同じくらいの頻度で自立支援という言葉を聞くことがありますよね?
自立支援も統一したケアにはとても大事なものになってきます。
デイサービスや訪問介護など在宅サービスの現場ではよく聞く言葉ですし、施設介護の現場でも重要視されていると思います。
自立支援とはどのようなことかというと、次の図を見ていただくと分かりやすいと思います。
利用者・入居者からも課題に向かって矢印が伸びた図になります。
先ほどもお伝えしたように、介護従事者と利用者・入居者は介護する側・される側という関係ではありません。
利用者・入居者自身も自身が抱える課題を解決や緩和させるためにエネルギーを使うことが自立支援のポイントの一つです。
もちろん自立支援はそれだけではありませんが、自分自身に向き合うということが重要な部分です。
「できることはご自身で行なっていただきましょう」というのが自立支援に近いと思います。
では、実際のケアに当てはめるとどんな感じになるでしょうか?
ケースを一つ例示しますので、内容について考えてみましょう
統一したケアについて考える
統一したケアの具体例について考えてみましょう。
例題
利用者Aさんは自宅で一人暮らしをしている。入浴や調理、洗濯など生活に必要なことは自身でできているものの、自宅にこもった生活をしていて他者との交流がほとんどない。県内に住むAさんの長女が2週間に1回訪問し2時間ほど滞在している。
長女からは「お風呂は入れているが、最近ふらつくことが増えてきていて浴室での事故が心配。」という話があった。
ケアマネージャーXはデイサービスの利用を勧め、なひのひデイサービスに週2回通うことになった。デイサービスに通うことにはAさんも納得しているが他者と交流することが久しぶりで緊張している様子。
さて、先ほどの方程式に当てはめるには、
①Aさんが抱えている課題は何か?(私たちは何にエネルギーを使うのか?)
②私たちはAさんが抱えている課題にどのようにエネルギーを使えばいいか?
③Aさん自身はAさんの課題にどのようにエネルギーを使うのか?
皆さんだったら①、②、③についてどのように考えますか?
例えばこの場合は
①の表面化している課題は交流と入浴です。(潜在的な課題も想定できますが今回は含めません)
②-1交流に関してはAさんと同じ趣味を持つ方と近い座席にして、趣味活動を通してスムーズに交流できるようにする。
②-2入浴に関しては自宅でも入るため、機能訓練を通して入浴の一連動作の訓練を行う。
デイサービスの実際の入浴では、Aさんが助けを求めるまではご自身で行っていただき、手伝いが必要な個所や危険個所を数回にわたり観察し共有する。
③-1Aさん自身は自宅での入浴を続けたい希望があるので、デイサービスでも観察をおこなってもらい危険個所を把握したうえで自宅での入浴を続ける。
③-2長女が2週間に1回訪問した際に調理に必要な買い物に一緒に出かけ、社会参加の機会を持ちながら調理を継続する。
あくまでも例題なので、ツッコみたい点もあるかもしれませんがご了承ください。
利用者Aさんの課題に対して、Aさんも含むチームでエネルギーを使っていくイメージは掴んでいただけでしょうか?
次が最後の項目ですが、統一したケアと多職種連携についてサラッとお伝えしていきます。
統一したケアと多職種連携・同職種連携
今回は介護業界で流行りの言葉を多用していますが、多職種連携や同職種連携も統一したケアには欠かせません。
最近では特に、多職種連携があちらこちらで謳われるようになってきましたよね。
統一したケアには多職種連携だけではなく同職種連携ももちろん必要なわけですが、連携の使い方を間違えるとせっかくの統一したケアが台無しになってしまいます。
ここまでお伝えしてきたように、統一したケアとは同じ課題に向けてみんなでエネルギーを使っていきましょうというものです。
ここまで読んでいただいた方はもうわかっていると思いますが、念のために伝えていきます。
統一したケアとは、同じ課題にむけてエネルギーを使いますが、同じ課題に向けてみんなで同じことをしていきましょうということではありません。
というのも、多職種連携はそれぞれの職種の専門性があって成り立つものだからです。
例えばデイサービスで言うと、
- 介護職には介護職の専門性
- 相談員には相談員の専門性
- 看護職には看護職の専門性
- 機能訓練指導員には機能訓練指導員の専門性
- 管理者には管理者の専門性
があります。
多職種がそれぞれの専門性を発揮して課題に向けてエネルギーを使うことになります。
同職種内では、人が違っても専門性は変わりませんので同じことを同じクオリティでできることが理想です。
先ほどの画像で示した通り、介護現場は縦割りではなく同じ円の上に横並びでいるようなイメージです。
なので、情報は多職種で共有しておくことで、他の専門性に役立つことがあるかもしれません。
課題解決の為になりそうなことは必ず共有しておくことが統一したケアを行うための多職種連携では重要です。
かいつまん雑な言い方をすると、やることは職種ごとに違うけど情報だけは共有しておきましょうということです。
ここまで統一したケアについてお伝えしてきました。
最後に、今回お伝えした内容をまとめましたのでぜひご覧ください。
まとめ
今回は、統一したケアとは何?ということについてお伝えしてきました。
統一したケアとは同じ課題に向かって全員がエネルギーを使うこと
利用者や入居者本人も統一したケアのチームの一員である
統一したケアにはそれぞれの専門性を発揮するけど、情報の共有は全員で行う
実際の現場では、課題が複雑化していたり情報の整理に時間が取れないなんて言うこともあるかもしれません。
それでも、今回の図を使って説明した統一したケアが頭に入っているだけでも違うと思います。
エラー: コンタクトフォームが見つかりません。