今回は、あなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法についてお伝えしていきます。
地域密着型通所介護の数は2016年をピークに2022年4月まで減少し続けています。
そして、地域密着型通所介護の数は今後も減少をし続けていくことが予想されています。
ここには国の思惑のようなものも絡んでいるため、減少を食い止めることは難しいでしょう。
そんな環境下でも潰れていく地域密着型通所介護にならないために、あなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法をお伝えします。
生き残り続ける方法を知るために知っておきたい次のことも合わせてお伝えしています。
- 地域密着型通所介護は淘汰されるのか
- 地域密着型通所介護の経営がなぜ難しいのか
- 地域密着型通所介護を運営するメリットと強み
最後までご覧いただくことで、あなたの地域密着型通所介護が生き残る方法を理解して頂けます。
ぜひご覧ください。
地域密着型通所介護は淘汰される?
少し前の話ですが、2015年(平成27年)の介護保険改正ではデイサービスに関して次の大きな出来事がありました。
- 介護報酬の大幅な引き下げ
- 翌年に定員18名以下の小規模型通所介護が地域密着型通所介護に移行することが決定
介護報酬の引き下げでは、特に小規模型通所介護の下げ幅は大きく悲鳴を上げた小規模デイも多かったでしょう。
そして、私の地域ではこんな噂が流れ始めました。
『国が地域密着型通所介護(小規模型通所介護も含め)を潰そうとしている』と。
この噂は半分正解で半分不正解です。
言葉としては潰されるよりも淘汰されると言う方がしっくりきます。
実際に次の2つの面を合わせて見てみると地域密着型通所介護が淘汰されるという意味がわかるでしょう。
- 減少し続ける地域密着型通所介護
- 地域包括ケアシステムの構築
この辺りは、ざっくりとポイントだけを説明していきます。必要のない方は次の経営が難しい理由まで読み飛ばしても大丈夫です。
では説明していきます。
減少し続ける地域密着型通所介護
地域密着型通所介護の数は2016年(平成28年)以降、一貫して減り続けています。
2016年には23,763件の地域密着型通所介護がありました。
翌年の2017年に約3,500件の事業所数減少があってからは、一貫して減少を続け2022年には18,947件になっています。
それに比べ通所介護事業所は2016年には19,677件の事業所数でしたが、2022年には24,445件にまで増加しています。
単純に、地域密着型通所介護の減少数だけを見ても淘汰されていることがわかると思います。
ただ闇雲に地域密着型通所介護を減らそうというわけではなく、あくまでも必要なデイと不要なデイをふるいにかけているという意味合いですね。
次の地域包括ケアシステムの構築でもう少し詳しくお伝えします。
地域包括ケアシステムの構築
小規模デイを地域密着型通所介護に移行することで、市町村単位でさまざまな管理ができるようになります。
かなりざっくり説明してしまうと、地域密着型通所介護は市町村単位で必要なデイと不要なデイのふるいにかけることができるということですね。
繰り返しですが、国が地域密着型通所介護を潰そうとしているのはあながち間違いではありません。
ですが、言葉としては淘汰されると言う方が近いということです。
地域密着型通所介護にとっては地域包括ケアシステムが1つのポイントとなります。
地域密着型通所介護は、地域に一番身近なデイサービスとして地域包括ケアシステムの一端を担えるかどうかというところがポイントになります。
地域に不要なデイサービスとは、地域包括ケアシステムの一端を担うことのできないデイサービスということですね。
この辺りは、後ほど地域包括ケアシステムに貢献するの項目でさらに詳しく説明します。
地域密着型通所介護の経営が難しい理由
地域密着型通所介護が生き残り続ける方法を知る前には、なぜ地域密着型通所介護の経営は難しいのかを知る必要があります。
地域密着型通所介護の経営が難しくなる理由は、何か1つの要因で起こるわけでなく複数の要因が複雑に絡み合って起きています。
私が実際に地域密着型通所介護を運営していて、経営を難しくしていると感じる要因は次の4つです。
- 人材確保が難しい
- 収入源と支出の増加
- 加算算定が不利
- 集客が難しい
この4つの要因が絡み合うことで地域密着型通所介護の経営を難しくしています。
特に地域密着型通所介護の場合は、小規模であるということが強みでもあり弱みでもあります。
職員にしてもご利用者にしてもたった1人の増減が経営に与える影響が大きいので、そのあたりも含めてお伝えしていきます。
人材確保が難しい
地域密着型デイサービスの経営が難しい理由の1つ目が、人材の確保です。
実際に、私の地域でも看護職員の確保ができずに、閉鎖した地域密着型デイサービスがありました。
人材の確保に困難を感じているのは地域密着型通所介護に限らず、ほかのデイサービスでも同じでしょう。
ですが、域密着型通所介護の場合は元々のスタッフ数が他のデイサービスよりも少ない傾向にあります。
そのため1人スタッフが抜けることが、デイサービスの継続に直接打撃を与えることになります。
そもそも、人材の確保が困難な理由には次のようなものがあります。
- 求人を出しても求職者からの応募が無い
- 離職率が高い
そのため、地域密着型通所介護では職員の離職率を下げて長く働いてもらうための体制が必要になります。
後ほど地域密着型通所介護の今後の課題で詳しくお伝えしていきます。
収入減少と支出の増加
地域密着型通所介護の経営が難しい理由の2つ目が、収入の減少と支出の増加です。
収入の減少は介護報酬の引き下げですね。
支出の増加には次の物があります。
- 人件費
- 光熱費
- 備品や食材費
この収入減と支出増の影響は地域密着型通所介護にとって、かなり大きいものがあるといえるでしょう。
平成27年の介護報酬改定では地域密着型通所介護(当時、小規模型通所介護)の介護報酬は大幅に引き下げられました。
要介護1で7時間以上9時間未満の利用の場合
基本報酬815単位から735単位まで80単位引き下げられた
その後、消費税増税で739単位まで上がり、令和3年度の改定では750単位まで引き上げられました。
しかし、現行入浴介助加算の引き下げがあり、入浴介助加算を算定している地域密着型通所介護にとっては引き上げ分がほぼほぼ相殺されるような形になりました。
それに相まって、人件費・光熱費・物価高による備品の購入費用の高騰も経営を圧迫する理由に拍車をかけています。
加算算定が不利
デイサービスの経営が難しい時にはよく「加算を算定しましょう」と聞くことがあります。
ですが、私は加算算定で運営がうまくいく話が通用するのは通常規模型以上のデイサービスだと思っています。
地域密着型通所介護は加算算定で不利な状況にあります。
例えば、平成27年の介護保険改正で新設された中重度者ケア体制加算では算定要件の一部に次のようなものがあります。
- 指定基準の介護職、看護職に加え介護職又は看護職を常勤換算で2名以上確保
- サービス提供時間を通じて、専従看護職を1名以上確保
中重度ケア体制加算は45単位/日です。1日15名だったとしても675単位です。
現状で人員を補充しないと中重度ケア体制加算の算定ができない地域密着型通所介護では、1日675単位のためにさらに職員を確保するというのは厳しいでしょう。
さらに令和3年度の改正では入浴介助加算が細分化され、これまで通りの算定方法では10単位の収入減となりました。
これまで以上の単位数を算定するには居宅訪問や計画の作成などこれまで以上に業務を増やす必要があります。
加算の新設や見直しは、デイサービスにとって有利な条件のように見えます。
ですが、加算の中には地域密着型通所介護にとって不利な状況になっているものもあるというのが事実です。
このように加算の算定が不利な状況であることも、地域密着型通所介護の経営を難しくしている要因になります。
集客が難しい
地域密着型通所介護にとって、そもそも集客ができないことは経営を苦しめる大きな要因になります。
特に地域密着型通所介護の場合は、定員として設定できるご利用者の人数が少ないのでご利用者1人の増減で経営に与える影響は大きいです。
せっかく集客ができたとしても、入院などで利用者数が減少してしまうということも日常茶飯事です。
特にコロナ禍においては、かなり苦戦を強いられている地域密着型通所介護も数多くあるでしょう。
集客がうまくいかない理由は様々あります
- 営業活動の方法を間違えている
- ご利用者のニーズに当てはまっていない
- 営業活動を行なっていない
- あなたのデイサービスを知っている人がいない
集客は特に、売り上げに直接影響する経営の土台の部分とも言えます。
数多くあるデイサービスの中から、選ばれるデイサービスに慣れないことは経営を難しくする要因になります。
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法
ここまでは、地域密着型通所介護の経営が難しい理由をお伝えしてきました。
ですが、この記事を読んでいる方の多くは今も営業が継続できている地域密着型通所介護の職員だと思います。
ですのでここからは、この先もあなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法についてお伝えします。
地域密着型通所介護が生き残り続ける土台には、地域に必要とされるデイサービスであるという条件があります。
今、営業を続けられているデイサービスはこれを既にクリアしているという前提で説明をしていきます。
踏まえたうえで、あなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法を4つお伝えします。
- 特色作りで差別化を図る
- 集客とリピートと稼働率アップに注力する
- 加算を分別する
- 地域包括ケアシステムに貢献する
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続けるためには、絶えずこの4つがクリアできていることが条件になるでしょう。
詳しく説明していきます。
特色作りで差別化を図る
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続けるには、他のデイサービスと差別化ができる特色作りが必要です。
特色作りに関しては、既にオープンしているデイサービスの特色作りの記事でも紹介していますので参考にしてみてください。
上の記事の中では特色作りを行うことで集客につながっていくということをお伝えしています。
ですが、ただガムシャラに地域密着型通所介護の特色作りを行えばいいというものではありません。
今、というかこれからの地域密着型通所介護は地域包括ケアシステムの中核を担う役割が出てきます。
そこで地域包括ケアシステムの一端を担うことのできる特色作りを行なっていく必要があります。
そのためには、あなたの地域密着型通所介護が所在する地域が出している高齢者保健福祉計画を見てみてください。
高齢者保健福祉計画には、あなたの地域の高齢者分野に関する次のような情報が記載されています。
- 高齢者分野の課題
- 基本理念
- ビジョン
- 目標
1~4の情報だけでも目を通すことで、地域が何を求めているのか掴むことができるでしょう。
集客・リピート・稼働率アップに注力する
言うまでもありませんが、集客は域密着型通所介護が生き残り続けるために必須です。先ほどお伝えした特色作りも集客のために行うものです。
ですが、あなたな地域密着型通所介護が生き残り続けるには集客だけでは足りません。
集客+リピート+稼働率アップの3つをセットで行う必要があります。
集客、リピート、稼働率アップが具体的に何を指すかというと次の通りです。
- 集客=新規ご利用者の獲得
- リピート=継続利用+利用回数増
- 稼働率アップ=新規ご利用者の獲得+利用回数増+キャンセル率を下げる
この3つをセットで実施できないあなたの地域密着型通所介護が今後生き残ることは難しいでしょう。
『結局、集客が必要なのか』と思うかもしれませんが、結局集客です。
生き残り続けるためには楽な道はありませんので、選ばれる事業所になって集客をし続けるしかありません。
選ばれる事業所になるために、先ほど説明したような特色作りが必要になってきます。
集客のコツに関しては、デイサービスの営業活動がうまくいかないと悩む方への記事で紹介していますので合わせてご覧ください。
加算を分別する
地域密着型通所介護では加算を分別することも生き残り続けるうえでは重要な選択です。
具体的には、算定する加算と算定しない加算を次のように分別していきます。
- 算定する加算=今のスタッフで要件を満たすことができる加算
- 算定しない加算=算定するには新たにスタッフの増員が必要な加算
先ほど加算算定が不利の項目でもお伝えしましたが、平成27年に新設された加算は地域密着型通所介護にとってはあまりいい条件とは言えません。
むしろ、加算を算定することが経営を圧迫する原因になっているかもしれません。
あなたの地域密着型通所介護で、新たにスタッフの増員が必要な加算は算定しないほうがいいでしょう。
その理由は次の通りです。
- 加算算定が将来の集客につながらない
- 将来、基本報酬や加算単位の引き下げがあっても人件費は簡単に下げられない
- 将来、基本報酬や加算単位の引き上げがあればその時に算定すればいい
加算は、デイサービスの特色の1つになり得るものです。
しかし、あなたのデイサービスのカラーに合わない加算を無理に算定しても集客にはつながらないです。
取得できる加算を取りこぼさず、苦しい加算は取らないということがポイントになります。
地域包括ケアシステムに貢献する
最後に紹介するのは、地域包括ケアシステムに貢献するということです。
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続けるためには、この項目をクリアすることも必須になります。
地域包括ケアシステムに貢献するとは次のことを指します。
デイサービスの利用によって、地域の高齢者の在宅限界を高める
地域の高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるように支援するということです。
そのために、あなたのデイサービスには次のような役割が求められます。
- 高齢者の社会的孤立感の軽減
- 家族の介護負担軽減
- 高齢者の心身の健康維持
- 高齢者の楽しみや生きがい作り
デイサービスにはこれらの役割を果たして地域の高齢者の在宅限界を高めることが求められています。
特に地域密着型通所介護はデイサービスの中でも、地域に特化しているデイサービスです。
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続けるためには、地域に一番近い存在としての役割をいかに担えるかが重要です。
あなたの地域密着型通所介護の取り組みや活動を通して、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられること貢献することを目指しましょう。
地域密着型通所介護を運営するメリットや強み
地域密着型通所介護が生き残り続けるためには、地域密着型通所介護を運営するメリットや強みを知っておくことも必要です。
地域密着型通所介護を運営するメリットや強みには次のようなものがあります。
- 営業活動の範囲が狭い
- 少数精鋭で運営ができる
- 需要がある
これらのメリットや強みを知って理解しておくだけでも地域密着型通所介護の運営には有利になります。
集客の効率化、離職率の軽減がいかに重要かということも理解できる内容ですのでご覧ください。
営業活動の範囲が狭い
地域密着型通所介護を運営するメリットや強みとして営業活動の範囲が狭いことがあります。
地域密着型通所介護のお客様となる人は、原則として地域密着型通所介護が存在する市町村に住んでいる方です。
そのため、営業活動の範囲も基本的には地域密着型通所介護が所在する地域の包括や居宅に行くことになります。
営業活動の範囲が狭いことで次のようなメリットがあります
- 同じ包括や居宅に繰り返し顔を出すことができる
- 繰り返し顔を出すことで、デイサービスの特色を覚えてもらえる
- 効率よく営業活動を行なうことができる
デイサービスの営業活動がうまくいかないと悩む方への記事でもお伝えしましたが、営業活動は繰り返し顔を出すことが集客につながります。
営業活動の範囲が限定されることで、顔を覚えてもらいやすくなったり営業活動のスケジュールが組み易くなるメリットが生まれます。
少数精鋭で運営できる
少数精鋭で運営できることも地域密着型通所介護の強みです。
地域密着型通所介護の場合、スタッフ自体が少人数というところが多いでしょう。
先ほど人材確保の項目では、スタッフ1人の増減の影響が大きいとお伝えしました。
ですが、そもそもスタッフの離職率が低ければ少人数のスタッフというのは少数精鋭という強みになります。
現在、私の地域密着型通所介護では8名のスタッフで運営しています。
以前に働いていた通常規模型の通所介護では倍以上で18名のスタッフ数でした。
この2つのデイサービスを比較した時に、少数のスタッフでは次のようなメリットがあります。
- デイサービスの運営方針の理解を徹底できる
- 情報の共有が速い
- 1人1人の責任感が強くスキルが上がりやすい
少数精鋭の強みを活かすためには、離職率をできる限り低くする必要もあります。
ですが1人1人のスキルが上がりやすい環境にあるので、強みをうまく生かすことで少数精鋭の色合いがどんどん強くなっていくでしょう。
需要がある
私が実際に地域密着型通所介護を運営していて感じるのは間違いなく需要があることです。
地域密着型通所介護のどこに需要があるかというと小規模であるという部分です。
既にオープンしているデイサービスの特色作りについてでも触れた部分でもあります。
ケアマネージャーが地域密着型通所介護を紹介する理由の一つに少人数のデイサービスがいいということがあります。
実際に営業活動でケアマネージャーと話をしても次のようなご利用者がいるという話をよく聞きます。
- 大勢の所が苦手
- がやがやと騒がしいところは嫌だ
- 少人数の所でかまってほしい
実際に営業活動に行ってみると、地域密着型通所介護に関する需要を見つけることができます。
生き残り続けるために、地域密着型通所介護に関する需要を見つけて集客につなげることも意識してみましょう。
まとめ
今回は、あなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法についてお伝えしてきました。
あなたの地域密着型通所介護が生き残り続けるには、次の4つのことが必要とお伝えしました。
- 特色作り
- 集客、リピート、稼働率アップ
- 加算の分別
- 地域包括ケアシステムに貢献
この4つのことを、ずっと継続して行い続けることがあなたの地域密着型通所介護が生き残り続ける方法です。
地域密着型通所介護には、人材の確保や収入減などで経営が難しい部分もあります。
ですが地域密着型通所介護には、間違いなく需要があり、効率よく営業活動ができるメリットや強みもあります。
この強みを活かして、地域から必要とされる地域密着型通所介護作りを目指しましょう!