最近、、いや、数年前から介護業界では地域包括ケアシステムという言葉を聞くようになりました。
介護業界で働いている人は、地域包括ケアシステムという言葉を一度は聞いたことがあると思います。
でも、地域包括ケアシステムって何?と聞かれたら意外と説明が難しいですよね?
この記事では記事を読んだ後に地域包括ケアシステムを他の人にも教えたくなるように地域包括ケアシステムについて解説していきます。
今回の記事でお伝えすることは次の通りです。
- 地域包括ケアシステムとは何かを分かりやすく解説
- なぜ地域包括ケアシステムが必要なのか
- 地域包括ケアシステムがデイサービスに与える影響
- 2025年が地域包括ケアシステムのスタート地点
地域包括ケアシステムは今後の在宅サービスでは必須で覚えておく必要がある内容です。
ぜひ最後までご覧ください!
地域包括ケアシステムって何?
地域包括ケアシステムを知る時にはまずは次の5つのキーワードを覚えておきましょう。
- 住まい(自宅、サービス付き高齢者向け住宅など)
- 医療
- 介護
- 介護予防
- 生活支援
地域包括ケアシステムとはこの5つのことを高齢者が住んでいる地域で一体的に提供されるようなシステムを作って行きましょうというものです。
でも、まだちょっと何を言っているのか分かりづらいですよね。
実際に厚生労働省の地域包括ケアシステムのホームページを見てみても、説明を理解するのはちょっと難しいかもしれません。
地域包括ケアシステムを実際に私が職員に説明をする時には、もう少しイメージをしやすいようにわかりやすく説明をしています。
では早速、地域包括ケアシステムに関してわかりやすく解説していきます。
地域包括ケアシステムをわかりやすく解説
実際に私が職員に地域包括ケアシステムを説明する時には次のようにわかりやすく説明しています。
実際に厚労省のホームページなどを読み込むよりはイメージをつかみやすいと思います。
地域包括ケアシステムは、住んでいる地域・地域に存在する道路・地域の中の自宅や建物を次のように捉えます。
- 地域=大きな建物
- 道路=大きな建物の中の廊下
- 自宅や各建物=大きな建物の中にある部屋
地域が大きな建物、道路は建物の中の廊下、自宅などは建物の中の部屋と捉えます。
すると、大きな建物の中には次のように様々な得意分野を持っている人が存在しますよね?
- 医療に詳しい人(病院や訪問看護など)
- 介護に詳しい人(訪問介護やデイサービスなど)
- 生活支援が得意な人(老人会やボランティア、NPO法人など)
- 人の世話をするのが好きな人
地域包括ケアシステムは『それぞれの得意分野を活かして、同じ建物の中で困っている高齢者等を助けられる関係を作っていきましょうね。』という考え方ですね。
地域包括ケアシステムでは、医療や介護などの専門性を持った人だけではなく地域住民さえも地域包括ケアシステムの一員に加えているわけです。
とはいえ、1つの建物(地域)があまりにも大きすぎると困っている高齢者に必要な支援が届かない事態になってきますよね?
そこで国では、地域包括ケアシステムで1つの建物(地域)を作る目安を決めています。
地域の目安はおおむね30分圏内
地域包括ケアシステムで国が基準としている大きな建物(地域)の範囲は次のような目安としています。
おおむね30分以内に必要な支援を受けられる範囲
具体的には中学校区を基本としている
『中学校区を目安にしていると、端から端まででも30分以内に行けそうですよね』ということですね。
ただし、『地域によって実情は違うので地域の実情に合わせた対応をしてくださいね』という考え方になっています。
確かに、例えば都会と田舎では環境や人口、社会資源が違いますので一律で目安を守ってくださいというのは無理がありますよね。
ですので、市区町村単位で地域の実情を把握していく必要が出てきます。
それでも、大きな建物(地域)の範囲目安を決めておくことで、自分たちの建物に足りていないサービスや資源は何かということを把握できます。
後ほど詳しく説明していきますが、地域包括ケアシステムは来たる2025年を目処に準備を進めていきましょうということになっています。
なぜ、地域包括ケアシステムが必要なの?
地域包括ケアシステムの根底にある考え方は、高齢者等が医療や介護が必要な状態になっても可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けられるようにしましょうということです。
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、先ほど説明したように『地域で高齢者を支える仕組み』が必要になります。
では、そもそも地域包括ケアシステムはなぜ必要なのでしょうか?
地域包括ケアシステムがなぜ必要なのかを理解するためには、次の3つの備えるを理解する必要があります。
- 2025年に備える
- ニーズの多様化に備える
- 要介護状態にならないように備える
地域包括ケアシステムの構築は来たる2025年に向けて備えていくことが重要になってきます。
そのうえで、ニーズの多様化に備える、要介護状態にならないように備えるという2つの備えていくことが重要になります。
詳しく説明していきます。
2025年に備える
先ほども少しだけ触れましたが、地域包括ケアシステムは2025年を目途にシステムの構築を目指しています。
この2025年がどんな年かというと、団塊の世代の方々全員が75歳以上になる年です。
団塊の世代は1947年から1949年の間、つまり第一次ベビーブームに産まれた方達を指しています。
日本は人口が減少しているのに対して高齢者の割合が増えています(少子高齢化社会)
2025年に向かって少子高齢化に加え、後期高齢者(75歳以上)の人数増加が加速するということです。
2025年という年には、他にも次のようなことが予測されています。
- 高齢者のうち5人に1人が認知症になる。
- 世帯数全体のうち4件に1件以上が高齢者のみの世帯になる。
人口減少と高齢化が急速に進むことで今まで介護の担い手であった介護職や家族が高齢化します。
それに加え、介護の担い手の人数自体が少なくなることが問題視されています。
こういった現象は2025年に突然起きるわけではくて、2025年に向かって少しずつ少しずつ状況が動いているわけです。
ですので、2025年を目途に地域包括ケアシステムがしっかりと機能するように今から(実際は数年前から動いています)備えていきましょうとなっています。
ニーズの多様化に備える
地域包括ケアシステムの構築が必要な理由の2つ目がニーズの多様化に備えるということです。
高齢者が可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けるということは、医療や介護に対するニーズの量が増えるだけでなくニーズの種類が増えていくというにつながります。
ニーズが多様化して複雑化していくということですね。
というよりも、今までは介護が必要になったら介護施設に入って介護を受けて余生を過ごすという選択が主流だったからニーズが表面化していなかっただけのようにも感じますが。。。
ですが、今は60歳以上の人の半分以上(51.0%)が最期まで自宅で過ごしたいと望んでいる世の中です。(令和元年版 高齢社会白書より)
そんな中で、多様なニーズに応えるために登場した代表的なものの一つにサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)があります。
サ高住は高齢者向けの施設ではありますが、次のような特徴があります。
- 部屋は賃貸契約の場合が多く、在宅生活の場である
- 介護を受けることが主な目的ではなく、生活相談や安否確認を受けることが主な目的
- 介護施設に比べ、出入りが自由
- 1人で生活するには不安だが、施設に入るまでもない方向け
サ高住は、見守りが無いと不安だけど見守りがある環境であれば1人でも生活ができるようというようなニーズに応える施設です。
地域包括ケアシステムでは最初にお伝えした5つのキーワードが一体的に提供されることを目的にしています。
ですので、例えばサ高住に往診に来てくれて、往診の医師からの指示はサ高住の職員が代わりに聞いてくれるなど医療との連携を行うことも可能です。
もちろん多様なニーズに応えられるのはサ高住だけではありません。
様々な分野でニーズの多様化に答えられる地域包括ケアシステムの構築が進められています。
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要介護状態にならないように備える
地域包括ケアシステム構築の大きな目的としては要介護状態にならないように備えるということがあります。
ここまであまり触れませんでしたが、介護予防や生活支援というキーワードがここでとても重要になってきます。
地域包括ケアシステムでは介護が必要になった時のことに加えて、そもそも介護が必要な状態にならないように予防したほうがいいですよね?という考え方も持っています。
確かに、介護や医療が必要のない生活ならそれに越したことはないですよね。
要介護状態にならないために(介護予防)、生活支援を受けて今の健康な心と、健康な体を維持していきましょうという考え方です。
メモ
介護予防のために生活支援が不可欠
生活支援の具体的な方法
地域包括ケアシステムで言われている介護予防の具体的な方法が次の内容です。
- 地域の体操の場への参加(いきいき体操、いきいきサロンなど)
- 趣味の集いの場に参加(カラオケ、日舞、詩吟、俳句など)
生活支援を行う組織として期待されているものの中には社会福祉法人やNPO法人などがあります。
しかし、それ以上に期待されているのが制度化されていないインフォーマルサービスと呼ばれる人たちです。
インフォーマルサービスとは、高齢者にとっての家族・友人・近所の人・ボランティアなどいわゆるいわゆる制度化されていない方たちです。
サービスの質としては一定しないけども、制度では入り込めない細かなサービスまで行える気心知れた方々ですね。
高齢者本人にとっては、インフォーマルサービスの方々と外出して楽しく活動することでその人らしく生活を送ることができます。
その結果が介護予防につながっていくということですね。
生活支援は介護予防にとても効果的(体験談)
私は実際にサ高住併設のデイサービスで働いていますので、生活支援が介護予防にどれほど効果的なのかを身に染みて理解しています。
サ高住に住んでいる方はそのまま併設のデイサービスを利用される方もいます。
生活の場はサ高住だけれど、事あるごとに身近な人(家族や友人、趣味の仲間など)が駆けつけてくれて外出をしてリフレッシュしてくるという方もいます。
サ高住の入居者が友人と出かけて帰ってきた時の笑顔は、デイサービスで見せる笑顔とはまた種類の違うものですね。
デイサービスは、お友達には勝てないな、、、と思いつつも、もっと笑顔を引き出せるデイサービスにしたいと勝手にメラメラ闘争心を燃やしています。
余談はさておき、、、そのぐらいインフォーマルサービスの方々は介護予防を目指す高齢者本人にとって重要だということですね。
地域包括ケアシステムでデイサービスに与える影響は?
私はデイサービスで働いていますので、実際に地域包括ケアシステムがデイサービスにどんな影響を与えているのかなと考えてみました。
デイサービス利用の目的も数年前に比べると多様化してきていることは間違いないです。
私がデイサービスで働きだした11年前は、デイサービスを利用される方は入浴・交流・機能訓練という単純目的の方が多かったですね。
ところが最近では、「ニーズが多様化してきてるなぁ」っていう実感がありますね。
例えば次のような具体的な目的をもって利用される方が3~4割程度まで増えています。
- 自宅で入浴ができるようにデイサービスの入浴時に機能訓練を行なってほしい
- 金銭管理が難しくなっているご利用者がこれ以上金銭管理ができなくならないように関わってほしい
- 自宅内でも自身で車いす操作ができるように機能訓練を行なってほしい
デイサービスに通うことが目的ではなく、在宅生活を継続させるためにデイサービスを利用するという方が増えているということですね。
デイサービスだけでは対応しきれない部分も出てきますので、社協などとも連携を図って対応するようなことも出てきています。
デイサービス側としては、個別に対応するケースが今後ますます増えてくるという意識をもって準備しておくことが必要になってきます。
地域包括ケアシステムの2025年はあくまでもスタート地点
さて、ここまでは地域包括ケアシステムとはなんぞやということに重きを置いてお伝えしてきました。
地域包括ケアシステム2025年を目処に作り上げていくものということは理解していただけたと思います。
ですが、地域包括ケアシステムは構築することが目的ではありません。
2025年からの超高齢化社会の中で上手に運用していく必要があります。
つまり、2025年はあくまでも地域包括ケアシステムのスタート地点だと言うことですね。
デイサービスや介護サービスに携わる人にとって地域包括ケアシステムに対して取る行動は次の通りです。
- 地域包括ケアシステムを理解しておく
- 地域(医療や地域住民など)と連携できる体制を作っておく
- 2025年までの地域包括ケアシステムの動向を追っておく
- 2025年に突入したら、地域包括ケアシステムの実際の動向を追っていく
2022年現在は、地域包括ケアシステムの構築に向けて着々と準備を進めつつ、動向を追っていくという感じですね。
いざ、2025年が来た時には地域包括ケアシステムが機能している真っ最中になります。
ですので地域包括ケアシステムの実際の動向を追いつつ、動向に合わせて柔軟な変化をしていけるように今から意識を持っておかなくてはいけないということになります。
まとめ
今回は地域包括ケアシステムについて分かりやすく解説しますというテーマでお伝えしてきました。
地域包括ケアシステムは地域全体を建物、道路を廊下、自宅を部屋と捉えながら包括的に支えあうシステムの構築を目指しています。
なぜ、地域包括システムの構築が必要かというと次の3つに備えるためです。
- 2025年
- ニーズの多様化
- 介護予防
地域包括ケアシステムはすでに、動き始めています。
介護サービスを提供する人たちは地域包括ケアシステムの動向を追いながら2025年に備えていく必要があります。
これからの介護業界では地域包括ケアシステムは必ず押さえておかなければいけないキーワードでもあります。
今回の記事が地域包括ケアシステムを理解するために少しでも役に立ちましたら幸いです。
ご覧いただきましてありがとうございました。