介護職員処遇改善加算は、ご利用者やご家族目線からだけでなくデイサービスの職員目線からも分かりづらい加算の1つです。
パッと見た感じで、漢字ばかりが続く呪文のような名前だし、とっつきづらい加算の一つですよね。
ですが、介護現場で働く介護職員は介護職員処遇改善加算を理解しておかないと、長期的に給料面で損をしてしまう可能性も出てきます。
今回は、デイサービスでの介護職員処遇改善加算に特化して、できる限りわかりやすく解説していきます。
介護職員処遇改善加算の目的や、分配のルール、もらえる人ともらえない人がいるの?などの疑問にお答えしていきます。
基本的には、他の介護サービスにも置き換えて読める内容ですので、デイサービスに限らず気になる方はご覧ください。
介護職員処遇改善加算とは?
最初に介護職員処遇改善加算について簡単に説明します。
介護職員処遇改善加算とは?
介護職員の給料をアップすることで、離職の防止や介護人材の確保につなげましょう。
そのために介護保険の財源だけでなく、ご利用者も料金の負担に協力してくださいね。
かなりざっくりした説明ですが、介護職員処遇改善加算についてはこんな感じです。
ちなみに給料アップというのは、一時的なものでなく、介護業界全体の賃金水準をあげていきましょうという意味合いです。
デイサービス側としては国の財源を使ったうえで、さらにはご利用者にも負担を頂くのですからもちろんそれなりの負荷があります。
例えば、次のような項目はデイサービス側が環境を整えておかないと、介護職員処遇改善加算は頂くことができません。
- 研修体制が整っているか
- 働きやすい環境作りを行なっているか
- 腰痛防止の対策を行なっているか
介護職員処遇改善加算を算定するための条件は他にもいくつかあります。
後ほど、介護職員処遇改善加算の算定要件の項目で詳しく触れていきます。
介護職員処遇改善加算の目的
介護職員処遇改善加算の目的は先ほどお伝えした通りで、次の通りです。
介護職員処遇改善加算の目的
- 介護職員の給料をアップすること
- 介護職員が介護職を辞めてしまうことの防止
- 介護職員として働く人材の確保
介護職員処遇改善加算は介護職員に特化した加算です。
なので、介護職員処遇改善加算としてのデイサービスに入った収入は全て介護職員に分配することになります。
つまり介護職員処遇改善加算はデイサービス側が設備投資や、固定費などの運営に関する出費に自由に使えるものではないということです。
もっと踏み込むと、管理者や生活相談員・看護職員などは分配の対象になりません。(介護職を兼務している場合を除く)
あくまでも、介護職員のために使うということが前提になっている加算です。
介護職員処遇改善加算を算定するまでの流れ
次の項目で詳しく触れていきますが、介護職員処遇改善加算を算定するにはいくつかの条件を満たすという前提があります。
介護職員処遇改善加算を算定するまでの流れは次の通りです。
- 算定のための条件を満たす
- 計画書を提出する
- 介護職員処遇改善加算としての収入を上回るように職員に分配(支出)する
- 一年間の介護職員処遇改善加算に係る収入と支出がどんな感じだったか自治体に報告する(実績報告書)
計画→実行→報告のような流れを毎年毎年繰り返していく感じですね。
この中で特に重要なのは、支出が収入を上回っているということです。
介護職員処遇改善加算を算定するには?
介護職員処遇改善加算も他の加算と同じように算定するための条件があります。
介護職員処遇改善加算にはⅠ~Ⅲがあり、介護職員処遇改善加算Ⅰが収入の割合が一番大きく、介護職員処遇改善加算Ⅲが一番小さくなります。
ですので、介護職員処遇改善加算Ⅰが条件が一番多くなります。
とはいえ、Ⅰ~Ⅲはほとんど同じような条件になっていて、キャリアアップ要件と言うものだけが条件に差が出ている部分です。
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの共通の算定要件
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲには次のような共通の算定要件がありますので、できる限りわかりやすくまとめてみます。
共通の算定要件
- 介護職員処遇改善計画書を作成して自治体に提出してください。
- 作成した計画書は職員にも見せて、給料アップの方法も職員がわかるようにしておいてね。
- 介護職員処遇改善加算で入ってきた収入は全て、職員の給料アップのために使ってくださいね。
- 介護職員処遇改善加算の収入をどのように使ったか、自治体に報告してくださいね。
- 労働保険に加入して、労働保険料をしっから、払って下さいね。
- 色々な法律を違反して、罰金以上の刑に触れないでくださいね。
こんな感じで、本来は算定要件がもっと難しい言葉を使って並べられています。
今お伝えした内容は介護職員処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲに共通している算定要件です。
では、次にⅠ~Ⅲで異なる算定要件をお伝えします。
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの異なる算定要件
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの算定要件で異なる部分はキャリアパス要件と呼ばれる部分です。
先ほどの共通の条件に加えて、それぞれ次の条件を満たす必要が出てきます。
介護職員処遇改善加算Ⅰ キャリアパス要件Ⅰ・キャリアパス要件Ⅱ・キャリアパス要件Ⅲ・職場環境等要件を全て満たすこと
介護職員処遇改善加算Ⅱ キャリアパス要件Ⅰ・キャリアパス要件Ⅱ・職場環境等要件を全て満たすこと
介護職員処遇改善加算Ⅲ キャリアパス要件Ⅰ・キャリアパス要件Ⅱのいずれかと職場環境等要件を全て満たすこと
また、難しそうな言葉がずらりと並べられましたね。。。
よく見ると、職場環境等要件というものを満たすことも共通の条件の様ですね。
”等”とか使うのは本当にやめてほしいですね。
ややこしいものをさらにややこしくさせていますよね。
さて、愚痴はさておきキャリアパス要件と職場環境要件について分かりやすく解説していきます。
キャリアパス要件とは?
介護職員処遇改善加算の中でのキャリアパス要件はⅠ~Ⅲに分かれています。
それぞれざっくりと説明していきます。
キャリアパス要件とは
キャリアパス要件Ⅰ・・・職員がそれぞれ今置かれている段階での給料の根拠や上位職に上がるための条件を明確にしておくこと
キャリアパス要件Ⅱ・・・職員やデイサービスがレベルアップできるように、研修を実施するか研修の機会を設けること
キャリアパス要件Ⅲ・・・経験や資格によって昇給する仕組みを作るか、昇給に関する基準を作り定期的に昇給を判定できる仕組みを作ること
- 介護職員処遇改善加算Ⅰでは、これら全てを満たす必要があります。
- 介護職員処遇改善加算Ⅱでは、キャリアパス要件ⅠとⅡを満たす必要があります。
- 介護職員処遇改善加算Ⅲでは、キャリアパス要件ⅠかⅡのどちらかを満たす必要があります。
なんとなくご理解いただけたでしょうか?
全体的な意味合いとしては、
- 介護職員の給料アップの仕組み
- 昇格の仕組みや
- 資質向上のための研修体制
をしっかりと整えてくださいというようなイメージでとらえてもらっていいでしょう。
職場環境等要件とは?
もう一つ、言葉からは理解しづらいような職場環境等要件に関して説明していきます。
職場環境等要件には大きく次の6つの項目があります。
- 入職促進に向けた取り組み
- 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
- 両立支援・多様な働き方の推進
- 腰痛を含む心身の健康管理
- 生産性向上のための業務改善の取り組み
- やりがい働きがいの醸成
この6つの項目がさらに、それぞれ4つずつの細かい条件に分かれていくことになります。
その4つの細かい条件のうち最低でも1つ以上に該当するということが、介護職員処遇改善加算の算定要件になるということです。
介護職員処遇改善加算はどのくらいもらえるの?
デイサービスに介護職員処遇改善加算としての収入になる金額はⅠ〜Ⅲのどの加算かによってかわります。
デイサービスの例で言うと次の通りです。
- 介護職員処遇改善加算Ⅰ 5.9%
- 介護職員処遇改善加算Ⅱ 4.3%
- 介護職員処遇改善加算Ⅲ 2.3%
基本報酬と呼ばれるサービスの基本料金に各加算・減算の計算を行なったサービス費に介護職員処遇改善加算の加算率をかけるという計算方法になります。
色んな商品を買って、そこにかけるという意味では、消費税みたいな感覚ですかね。。
介護職員処遇改善加算Ⅰの場合5.9%なので、
基本報酬や、他の加算や減算でデイサービスの売り上げが100万円だったら、介護職員処遇改善加算は5万9千円入ってくると言うことですね。
利用者ごとの計算なので、多少誤差はでると思いますが。
いずれの場合でもデイサービスの収入に左右されて、介護職員処遇改善加算としての収入は変動が出てくるということになります。
では、デイサービスへの収入となった介護職員処遇改善加算は介護職員にどのように分配されるのでしょうか?
介護職員処遇改善加算の分配方法はどうなっているの?
一つ前の項目では、デイサービスの収入となる介護職員処遇改善加算についてお伝えしてきました。
デイサービスの収入となった介護職員処遇改善加算は余すことなく介護職員に分配しなければいけません。
しかし、その分配の方法はデイサービス側に任せられています。
介護職員全員に均等に分配するのではなく、特定の職員にのみ分配するということもできるのです。
私が知るデイサービスでは、全ての介護職員に分配しているデイサービスが多いようです。
もし転職などを検討している方は介護職員処遇改善加算を貰えるのかどうか、事前に確認をすることをおススメします。
では、介護職員処遇改善加算はどのような形で支給されるのか説明していきます。
介護職員処遇改善加算の分配の手段
デイサービス側が、介護職員に介護職員処遇改善加算を分配する主な方法は次の通りです。
- 処遇改善手当
- 賞与
- 調整金
- 基本給の増額
私が働くデイサービスでは、基本的には処遇改善手当として毎月固定の手当として支払っています。
それでも、収入が支出を上回ることが多いので賞与の時や、年度末などに調整金という形で分配することもあります。
介護職員処遇改善加算はデイサービス全体の収入に左右されますので、その年によって去年より多かったや少なかったなど変動が出やすいです。
介護職員処遇改善加算はもらえる人ともらえない人がいるの?
先ほどもお伝えしたように、介護職員処遇改善加算をどのように分配するかはデイサービス側が決めることができます。
ですので、処遇改善手当などの給料としてもらえる人ともらえない人がいるというのが現状です。
もらえる、もらえないなどの根拠は就業規則など法人や事業所単位での決まり事になります。
私のデイサービスでは、介護職員は例外なく処遇改善手当として支給しています。
ですので、もらえない根拠は分からないのですが、次のような条件が関係しているかもしれません。
- 勤務年数
- スキル
- 貢献度
- 勤務態度
介護職員処遇改善加算を給料としてもらえていない場合は、もらえない理由を直接確認してみることおススメします。
介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の違いは?
介護職員処遇改善加算と似ている、加算で介護職員等特定処遇改善加算というものがあります。
また出ましたね、、、”等”。
この項目ではわかりやすくするために
介護職員処遇改善加算を処遇改善
介護職員等特定処遇改善加算を特定加算と呼びます。
処遇改善と特定処遇はどちらも介護職員の給与アップのために使われるという意味では一緒です。
特定加算は処遇改善Ⅰ~Ⅲのいずれかを算定しているという条件のもとで算定できる加算です。
処遇改善と特定処遇の違いの一つに、支給対象の職員があります。
- 処遇改善が介護職員全般が対象です。
- それに対し、特定加算は主に勤務年数が長く、経験や技量に優れた介護職員を対象にしています。
特定加算ではキャリアのある介護職員が、介護に関わることを辞めてしまうことを防止するための意味合いが強いですね。
まとめ
今回は、介護職員処遇改善加算とはについて説明をしてきました。
デイサービスにおける介護職員処遇改善加算とは、介護職員の給料水準を底上げすることで離職の防止と人材確保につなげる狙いがあります。
介護職員処遇改善加算としてデイサービスの収入になったお金は、1円単位で全て介護職員の賃金として分配する必要があります。
その分配方法はデイサービスに委ねられています。
ですので、介護職員によってもらえる金額に差があったり、中にはもらえない介護職員も出てくる可能性があります。
介護職員処遇改善加算は、介護職員の給料に直結する加算です。
介護現場で働く職員としてはどんな仕組みで成っているのかを理解しておいた方がいい加算の1つですのでこの機会に理解しておきましょう!