この記事で分かるデイサービスのことは次の通りです。
- デイサービスのヒヤリハット報告書は多いほうがいいのか?
- デイサービスにおけるヒヤリハット報告書の質とは
- デイサービスのヒヤリハット報告書を活用するには?
以前に、デイサービスでの事故とヒヤリハットの違いについての記事を書きました。
この記事の中では、事故やヒヤリハット報告書を出しやすいデイサービスの雰囲気づくりに関しても触れています。
さらにその中では、職員がヒヤリハット報告書をどんどん出せるようにしていきましょうとお伝えしています。
私自身も、デイサービスの職員には「ヒヤリハット報告書はどんどん出してくださいね」と伝えているのが事実です。
この話をすると、デイサービスの職員の中には次のように様々な疑問や意見を持たれる方も多いでしょう。
- ヒヤリハット報告書を多く出せば事故は防げるの?
- ヒヤリハット報告書を多く出すことにどんな意味があるの?
- ヒヤリハット報告書は多く出しても、古い物は埋もれていくし意味がないよね
- ヒヤリハットが多いデイサービスは危ないから、少ないほうがいいよね
- いつも同じようなヒヤリハット報告が出てくるし意味がないよね
- 責任を追及されるからできる限り出したくない
- ヒヤリハット報告書をどの範囲まで出せばいいか分からない
実際のところ、デイサービスでヒヤリハット報告書は多いほうが良いというのは間違いなのでしょうか?
ヒヤリハット報告書はどのくらいの枚数が適切なのでしょうか?
今回は、デイサービスでのヒヤリハット報告書は多いほうが良いのか少なくても良いのかについてお伝えしていきます。
そのうえで、デイサービスにおけるヒヤリハット報告書の質や活用法についてもお伝えしていきますのでぜひ最後までご覧ください。
この記事を書いている私に関して
- デイサービス勤務歴11年以上の経験の中で、介護職、生活相談員、管理者を経験する
- デイサービスの生活相談員や管理者(社会福祉士)として10年以上にわたり相談窓口として勤務する。
ヒヤリハット報告書が多いほうが良いは間違いなの??
私はよくデイサービスの職員に「ヒヤリハット報告書はどんどん出してね」と言っています。
ですが、冒頭でもお伝えしたように「ヒヤリハット報告には意味がない」「責任を追及されるので出したくない」と考える職員がいるのも事実です。
実際のところデイサービスでのヒヤリハット報告書は多いほうが良いという考え方は、間違いなのでしょうか?
「デイサービスでヒヤリハット報告書が多いほうが良いの?」という質問への私の答えは、「半分正解、半分間違い」です。
何とも煮え切らない答えで申し訳ありませんが、記事を読んで頂ければこの答えの意味が分かると思います。
まずそもそもの前提として、ヒヤリハット報告書は枚数や件数で良し悪しを判断する物ではありません。
ですので、1ヶ月にどのくらいの枚数が提出されていたほうが良いなんて言う正解はもちろんありません。
では、ヒヤリハット報告書の枚数が多いほうが良いの?に対して正解か間違いかを分けるキーワードは何かというと次の2つです。
- 報告書の質
- 報告書の活用法
報告書の質が高くて、活用できるヒヤリハット報告書であれば、枚数が多いほどデイサービスの財産になるでしょう。
ですが、反対に報告書の質が低くて、活用できずにファイルに埋もれっぱなしのヒヤリハット報告書は枚数が多くてもあまり意味がないのかなと思います。
ヒヤリハット報告書の質や活用法に関しては後ほど詳しくお伝えしていきますが、基本的には質と活用法の2つに尽きるかなと思っています。
デイサービスでのヒヤリハット報告書にはいくつかの役割、役目があります。
ヒヤリハットの役割や役目の中でも一番大きなウエイトを占めるのが『事故の未然防止』でしょう。
役割を果たすことのできるヒヤリハット報告書であれば、多いほうが良いが正解でしょうし、
反対に役割を果たすことのできないヒヤリハット報告書であれば、多いほうが良いは間違いと言えるでしょう。
ヒヤリハット報告書としての役割を果たせるかどうかを決める要素が『ヒヤリハットの質』と『ヒヤリハットの活用法』ということです。
では、ヒヤリハットの質やヒヤリハットの活用法とはどういうことを指すでしょうか?
まずは、ヒヤリハットの質について詳しくお伝えしていきます。
ヒヤリハット報告書の質って何??
ここまで、何度かヒヤリハットの質ということについて触れてきました。
では、そもそもデイサービスにおけるヒヤリハット報告書の質とは何でしょうか??
私はデイサービスにおけるヒヤリハット報告書の質を左右する大きな要素は次の3つだと考えています。
- 記録の仕方
- 積み重ねがある
- 活用ができる
細かいところで言うとヒヤリハット報告書の質を決める要素はもう少しあると思いますが、私が常に意識をしているのはこの3つの要素です。
これら3つそれぞれに、重要性があることを理解しておきましょう。
記録の仕方が適当だったり事実と違うことを書けば質は低くなります。
毎回同じような報告書で、積み重ねが無ければ質は低くなります。
報告書を書いても、書きっぱなしで活用できなければ質は低くなります。
では、この3つの要素を意識して、ヒヤリハット報告書の質を高めるためにはどうしたらいいでしょうか?
次はヒヤリハット報告書の質を高める方法についてお伝えしていきます。
ヒヤリハット報告書の質を高めるには?
先ほど、ヒヤリハット報告書の質を決めるのは次の3つの要素だとお伝えしました。
- 記録の仕方
- 積み重ねがある
- 活用ができる
これら3つの質を高めていくことが、デイサービスのヒヤリハット報告書の質を高めることにつながります。
では、具体的にどのようなことを意識することでそれぞれの質は高まっていくでしょうか?
ここからはデイサービスでのヒヤリハット報告書の記録、積み重ね、活用に焦点を当てて質の高め方についてお伝えしていきます。
デイサービでヒヤリハット報告書があまり意味がないなと感じている場合には、まずはヒヤリハット報告書の質を高める必要があるかもしれません。
デイサービスでヒヤリハット活動をするうえでは、とても大事な部分ですので是非ご覧ください。
記録の仕方
デイサービスのヒヤリハット報告書の質を決める全ての土台になるのは、記録の仕方と言ってもいいでしょう。
記録の仕方に関して、ヒヤリハット報告書の質を高めるためには次の事ができている必要があります。
- 事実の記録ができること
- 事実の記録に基づいて原因を発見できること
- 原因の発見に基づいて改善策を立てられること
要は、経過(事実)から改善までがストーリーとしてつながっていることが必要だということですね。
これは、私自身もデイサービスの職員に一貫して言い続けていることです。
記録の書き方については、【社会福祉士が解説】デイサービス事故報告書の質を高める書き方と5つのNG行動を解説!!の記事で書き方の流れとしてさらに詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
(内容は事故報告書の記事ですが、ヒヤリハット報告書にも当てはまりますので参考にしてみてください。)
- どんな状況でヒヤリハット事案を発見したのか(事実の記録)
- なぜそれが起きたのか(事実に基づく原因の発見)
- どうやったら事故につながらないように防げるのか(原因に基づく改善策)
1~3の流れに一貫性を持たせる必要があるということですね。
誤魔化すために事実と違うことを書いたり、原因と改善が結びつかないようなヒヤリハット報告書は役割を果たさないことになります。
例えばどういうことなのかと言うと、、、ヒヤリハットの経過記録に『本当は歩行介助をしていなかった』のに『歩行介助をしていたが』とヒヤリハット報告書に書いたとします。
そうすると歩行介助をしていたという前提でヒヤリハット事案が起きた原因を考えていくことになります。
事実に基づけば本来は、歩行介助を何故しなかったのか、歩行介助が何故できなかったかについて原因を探していかなければいけない話なのですが、
誤魔化して事実と違うことを書くことで、歩行介助の仕方に原因があったとか、利用者側の要因が大きかったんじゃないかと原因の探し方の方向性が変わってしまいますよね。
そうするとお察しの通り、改善策も本来の事実からは的外れ、見当違い・・・いやこの場合、検討違いが正しいでしょうか?とにかく明後日の方向を向いた改善策になってしまいます。
それで、次の積み重ねの話や活用できるという話にもつながっていくのですが、こういった記録の仕方がきちんとできていないヒヤリハット報告書は1枚の紙きれとして終わっていく傾向が強いでしょう。
では、次に積み重ねについてお伝えします。
-
【社会福祉士が解説】デイサービス事故報告書の質を高める書き方と5つのNG行動を解説!!
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積み重ねがある
ヒヤリハットの質を高めるための2つ目は積み重ねがあることです。
積み重ねと言っても、ただ単にヒヤリハット報告書の枚数を積み重ねるという話ではありません(分かってるがな!というツッコミが脳内で響き渡っています)
では、ヒヤリハットの積み重ねがあるとは具体的にどのようなことを言うでしょうか??
私は、次の2つをヒヤリハットの積み重ねとして考えています。
- ヒヤリハット報告書を書くタイミングを早める
- 1つの事案に類似した事案の検討も一緒にできる
ここはもう少し詳しくお伝えしたほうが分かりやすいと思いますので、詳しくお伝えしていきます。
ヒヤリハット報告書を書くタイミングを早める
皆さんのデイサービスではヒヤリハット報告書はどういった場合に提出しているでしょうか??
- ヒヤリ事案が起きてから気付いて書く
- ヒヤリ事案が起きる前に気付いて書く
- そもそもヒヤリハット事案が起きないから書かない
私自身もそうですしデイサービスの多くの職員は、1番のヒヤリ事案が起きてから書くケースが多いように感じます。
例えば「ご利用者が躓いたけれども転倒には至らなかった」という事案などがそれに該当するでしょう。
ですが、デイサービスでのヒヤリハット報告書の質を高めるには、ずっとその段階にいてはダメということですね。
リスクマネジメントの話にもなってくるのですが理想は2番のヒヤリ事案が起きる前に気付いて書ける水準に行くことです。
ちなみに3番のヒヤリ事案が起きないから書かないというのは、デイサービスにとって理想形ではありません。
相当優秀な人材が揃っていて本当に事案が起きていなければいいのですが、ほとんどはデイサービスの組織が鈍感でヒヤリ事案に気付けていないだけというケースが多いからです。
話を戻しますが、これからヒヤリハット活動に力を入れて取り組まれる場合に1番から始まるのは仕方がない事だと思います。
ですが、ヒヤリハット報告書の質を高めるにはいつまでも何かが起きてヒヤリハットを書くレベルにいてはいけないでしょう。
例えば、次のような事例が分かりやすいでしょうか?
ご利用者の動線上にゴミ箱が置かれていて、ご利用者がゴミ箱に気付かずに躓いて転びそうになった
躓いて転びそうになった段階でヒヤリハット報告書を書くのが1番のヒヤリハット事案が起きてから報告書を書くという段階ですね。
では、2番のヒヤリハット事案が起きる前に書くというのはどういうことでしょうか?
この場合は「動線上にゴミ箱が置かれていた時点」でヒヤリハット報告書を書くというのが当てはまりますかね。
「ここにゴミ箱を置いていたら危ないよね?」と察知してゴミ箱を撤去して、他の職員にも共有できる力をつけていく必要があります。
ヒヤリハット活動をしていくうえで何かが起きてから事案を認識する水準にずーっといるのではなく、リスクを察知して何かが起きる前に対処できる力を付けることが積み重ねになります。
1つの事案に類似した事案の検討も一緒にできる
ヒヤリハット報告書を提出された後の事を考えると、同じ事案が次に起きなければ改善の効果があったかなと評価できますよね。
ヒヤリハット事例は、発生したから悪いという善悪を判断するものではありませんが、、、、
1つの事案が起きた時に、その事案だけの検討に終わっていませんか??と言うのがここからお伝えしたいことです。
先ほどのゴミ箱の事例を引き継いで、お伝えしていきます。
ご利用者の動線上にゴミ箱が置かれていて、ご利用者がゴミ箱に気付かずに躓いて転びそうになった
この事例があった時に職員が検討しなければいけないのは、この事例に関しての原因と改善に関してです。
検討事項はいろいろあると思いますが、最終的にはゴミ箱をご利用者の動線上に置かないという改善になっていくのかなと思います。
ですが、積み重ねという視点で言うとこれだけでは足りません。
言わずもがなかもしれませんが、気を付ければいいのはゴミ箱だけじゃないですよね?
- 洗面台の下の床が水で濡れていることがあるよね
- ○○さんは椅子を出したまま移動することがあるから気を付けなくちゃいけないよね
ゴミ箱で躓いたということに類似しているような事案も、ヒヤリハットと認識できて提案できる力が必要になります。(デイの雰囲気づくりも必要です)
時には事案とは類似していない全く違う話題を持ち出す職員もいますが、それもアリだと思います。
1つのヒヤリハット事案から、複数のリスクマネジメントにつながっていくことも積み重ねとして必要でしょう。
活用できる
ヒヤリハット報告書の質を高めるには、活用できるヒヤリハット報告書を作成していく必要があります。
書きっぱなしで後から見返す気にもならないようなヒヤリハット報告書では質が高いとは言い難いですよね。
デイサービスで活用できるヒヤリハット報告書を作成していくためには、次のことを意識していく必要があります。
- 事故の未然防止に効果があること
- 後から見返しても意味が分かること
- 意味のある集計ができること
ここは次の項目で詳しくお伝えしていきます。
1つのポイントは私もよくデイサービスの職員に言うのですが、曖昧な表現や抽象的な表現をしないで下さいということですね。
曖昧だったり抽象的で捉え方のよく分からない表現と言うのは、
- 人によって解釈が違う
- 後から見返した時に「結局何をしたらいいんだっけ??」となる
- 見る気が無くなる
曖昧だったり抽象的な表現はデメリットばかりが発生し、活用できるヒヤリハット報告書からは程遠くなります。
このことは事故やヒヤリハット報告書の書き方に関する記事でもお伝えしています。
ヒヤリハット報告書の活用法についてはここから詳しくお伝えしていきます。
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参考【社会福祉士が解説】デイサービス事故報告書の質を高める書き方と5つのNG行動を解説!!
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ヒヤリハット報告書を活用するにはどうすればいいの?
ヒヤリハット報告書は活用の仕方次第で『ただの紙』にもなりますし、『デイサービスの財産』にもなります。
活用の仕方が大事だということは多くのデイサービスが理解されていることと思います。
ですが、実際にヒヤリハット報告書の活用ができているかというと、そうではないデイサービスも多いのではないでしょうか??
そこでここからは、ヒヤリハット報告書を活用するためにデイサービスがやるべきことについてお伝えしていきたいと思います。
先ほども活用できるヒヤリハット報告書は次の3つを意識する必要がありますよとお伝えしました。
- 事故の未然防止に効果があること
- 後から見返しても意味が分かること
- 意味のある集計ができること
ヒヤリハット報告書を作成する時にこの3つを意識することで、活用できるヒヤリハット報告書になっていきます。
つまりデイサービスの中でこの3つを意識してヒヤリハット報告書を作ることがヒヤリハットを活用することにつながるということですね。
では実際にどのように3つを意識していくといいか、具体的にお伝えしていきます。
事故の未然防止に効果があること
ヒヤリハット報告書は事故の未然防止に効果があることで活用につながります。
反対に言うと事故の未然防止に効果がないヒヤリハット報告書は活用のしようがないということですね。
さて、デイサービスの中で次のような表現を使っている時はないでしょうか??
- 意識を徹底する
- 職員同士の声掛けを徹底する
- 見守りの徹底
- 安全に行う
- しっかり(きちん)とやる
- 十分余裕を持つ
これが先ほども少し触れた、抽象的や曖昧な表現になります。
この前段階に具体的な内容が盛り込まれていればいいのですが、前段が無い場合には使わないほうがいい表現ですね。
例えば先ほどのゴミ箱に躓いた事案で、職員の意識を徹底するという改善が出てきたとして、それが事故の未然防止につながるでしょうか??
答えはNoですね。
なぜかと言うと『意識の徹底』だけでは結局のところ、職員は何をしたらいいか分からないからです。
これで事故が未然に防げるなら「事故ゼロになるように意識を徹底していきましょう」と呪文のように毎日唱えていけばいいだけの話ですよね。
ヒヤリハット報告書を事故未然防止のために活用するには、具体的な原因の究明と改善策の模索が必要になります。
大事なのは『具体的な』という部分ですね。
これは先ほどもお伝えしたように、抽象的や曖昧な表現をしないということですね。
『意識の徹底』はまさに抽象的で曖昧な表現です。厳しい言葉を使うと、誰も責任を負いたくないから使っている表現です。
大事なのは、
- どういう風にしたら意識の徹底ができるのか
- 意識の徹底とは具体的にどういうことを指すのか
- そもそも職員の意識だけで解決できることなのか
デイサービスのスタッフ全員が同じ解釈をできるようにかみ砕いていくことです。
これを考えるのには経験も必要ですし、考える力や想像力が必要です。
ですが、デイサービスの中でここを面倒くさがらずにやることで、事故の未然防止に効果がある活用できるヒヤリハット報告書作りができるようになります。
後から見返しても意味が分かること
後から見返した時に「あれ?これってどういう意味だっけ?」となるようなヒヤリハット報告書は活用しづらいです。
先ほどの話ともつながるのですが、抽象的な表現や曖昧な表現がされていると後から見返した時に意味が分からないですよね。
- 結局何をすればいいんだっけ?と考えることから始めなければいけない
- 見返しても同じような事しか書かれていない
このようなヒヤリハット報告書は、活用されずにただの紙としてファイルの中に埋もれていくことになります。
人は忘れていく生き物ですので「あの時どういうルールになったんだっけ?」と思い出したい時にパット見てパッと思い出せる報告書であることが重要です。
後から見返して意味の分かるヒヤリハット報告書にするためにデイサービスでやるべきことは次のことです。
- ヒヤリの種類ごとに分けて保管するなど分かりやすく整理しておく
- 原因や改善は具体的に書く
- 改善の結果、どうなったかまで記録しておく
ヒヤリの種類ごとに分けて保管するなど分かりやすく整理しておく
まず、ヒヤリハット報告書の保管の仕方についてですね。
ヒヤリハット報告書の検討が終わって保管する時に、単純に一まとめにファイルに綴じているデイサービスも多いと思います。
しかしそれでは、今見返したい報告書を探すのに時間がかかり、そもそも見返すのを面倒だと感じてしまいます。
そうならないためにも、ヒヤリハット報告書は種類や区分ごとに分けておくなど分かりやすく整理しておきましょう。
ヒヤリの区分に関しては、【事故とヒヤリの違い】デイサービスでの事故とヒヤリハットの分け方を解説!でも紹介しています。
ここに関してはデイサービスの中で分かりやすい分け方にしていくといいでしょう。
分かりやすく分けておくことで、職員が見返しやすく活用できる機会になっていきます。
後からお伝えする、意味のある集計にもつながっていきます。
原因や改善は具体的に書く
つぎに原因や改善は具体的に書くことですね。ここは先ほども説明した内容と重複してきます。
デイサービスでヒヤリハット報告書(事故報告書も含めてですが)を活用できるものにする為に、私が常にとにかくこだわるのはこの部分ですね。
ヒヤリハット報告書の原因に『見守り不足』と書かれると、改善は『見守りの強化』や『見守りの徹底』としか書けなくなります。
ヒヤリハット活動をした時の管理者とデイサービス職員の会話です。
管理者『見守りの強化って何ですか??』
職員「しっかりと事故の無いように見守ることです」
管理者『今回はなぜ、しっかりと見守りができなかったんですか?』
職員「他の方のトイレ介助をしていて・・・」
管理者『次に他の方のトイレ介助に入る時はどうやってしっかりと見守るんですか?』
職員「他の職員に声をかけてから行きます」
管理者『今回はどうして、他の職員に声をかけなかったんですか?』
職員「トイレ介助はちょっとの時間だったので大丈夫だと思いました。」
管理者『結局のところ見守りの強化って何でしょうかね??』
職員「その場を離れる時には、必ず他の職員に声をかけることです。」
黄色の線を引っ張った箇所が曖昧な部分、赤文字にした箇所が具体的になった部分ですね。
改善を『見守りの強化』で片づけてしまうか『必ず他の職員に声をかけること』とするかで天と地ほどの差があると思います。
私は職員に対してほとんど理詰めをすることはないのですが、ヒヤリや事故報告に関しては納得いくところまで理詰めをしていきます。(狂気じみてますね。。。)
そうすることで活用できるヒヤリハット報告書になっていきますし、事故が起きてご利用者やご家族に迷惑をかける確率も下げることができます。
『見守りの強化』は人によって解釈の違う言葉なので、なかなか活用しづらいですよね。
ですが『場を離れる時には、他の職員に必ず声をかける』は全員が同じ解釈ができます。(これを全員が実行できるかどうかは別問題ですが・・・)
ヒヤリハット報告書には保険をかけずに、活用できるものにしていきましょう。
改善の結果、どうなったかまで記録しておく
ヒヤリハット活動をする中で、よく見られるのが改善策を実行して終わっているケースです。
え?改善策を実行して何がダメなの?と思う方もいるかもしれません、、、
が、ヒヤリハット活動で大事なのは改善策を実行してみた結果どうなったかまでを検討していくことです。
- その改善策が合っているか
- 事故の未然防止に効果を発揮しているか
- どこかに別の不具合が出ていないか
ヒヤリハット事例を検討した結果導き出した改善策は、必ず改善につながるとは限りません。
改善をしようとしても別のところで新たな課題が出たり、実情に合っていなかったということは有り得ます。
そのため改善策を実行してから1週間~2週間後には必ずフィードバックするようにしましょう。
フォードバックして再度検討することで、新たな意見が出て改善が深まることがあります。
『PDCAサイクル』と言う言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、ヒヤリハット事例に関してもPDCAを当てはめていく必要があるということですね。
効果が出なかった改善策は自然消滅したり、職員間で何となく独自のルールに変化していってしまいます。
そうなると後から見返した時に「あれ?このヒヤリハットって結局どうなったんだっけ?」と活用できない物なっていきます。
そうならないためにも、改善の結果どうなったかまでを追いかけて記録しておくようにしましょう。
意味のある集計ができること
ヒヤリハット報告書を活用するには、意味のある集計をする必要があります。
多くのデイサービスで、ヒヤリハットや事故に関する集計や分析は行なっていると思います。
ですが、割とヒヤリの集計や分析で止まってしまっているデイサービスが多いのではないでしょうか??
大事なのはその先で『集計や分析の結果何をしていかなければいけないのか』ということですね。
例えば「昼食後の時間に転倒に関するヒヤリハットや事故が多くなっている」と集計が出たとします。
ですが昼食後には、口腔ケアや午睡の為の移動が活発になる時間なのでその集計が出るのは当たり前のことだと思います。
では、その集計をどう活用していくといいでしょうか??
1つの方法は比較することですね。
デイサービスで言うと、移動が活発になる時間は他に送迎車がデイサービスに到着した直後があります。
ですが、送迎後には転倒に関連するヒヤリハットや事故の事例はほとんど無いという集計になったとしましょう。
こうなった場合に、送迎後と昼食後の移動にはどんな違いがあるだろうと比較できるようになります。
事故やヒヤリハットの要因になるような違いを見つけることができれば、改善にもつなげていくことができますよね。
デイサービスの中だけで比較するのではなく、同法人内の他のデイサービスと比較したり外部のデイサービスに協力を乞うことも視野に入れてみましょう。
まとめ
今回は、【ヒヤリの質と活用】デイサービスで『ヒヤリハット報告書は多いほうが良い』は間違い??というテーマでお伝えしてきました。
デイサービスにおいてヒヤリハット報告書の善し悪しは枚数で決まるものではありません。
- 質
- 活用法
この2つが、デイサービスでヒヤリハット報告書の評価を決める大事な要素となります。
ヒヤリハット報告書の質は、記録の仕方、積み重ねがあることなどで決まっていきます。
ヒヤリハット報告書の活用していくには、事故の未然防止に効果があることや後から見返しても意味が分かる必要があります。
そのため、ヒヤリハット報告書は枚数が多いほうが良いというのは半分正解で半分間違いということになります。
いくら枚数が多くても、質が低く活用できないようなヒヤリハット報告書は枚数が多くても意味がないです。
反対に、質が高くてどんどん活用できるようなヒヤリハット報告書は枚数が少なくてもデイサービスの運営に大いに役立つでしょう。
ヒヤリハット報告書の質を高めて活用できるようになっていくと、自分たちでリスクに気付けるようになっていきます。
デイサービスでヒヤリハット報告書の重要な部分を理解して書くことは、リスクマネジメントのスキル向上にもつながりますので積極的に活用していきましょう。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。