この記事で分かるデイサービスのことは次の通りです。
- そもそも事故とヒヤリハットは何故分ける必要があるの?
- デイサービスでの事故とヒヤリハットの違いの分け方
- 事故やヒヤリハットの違いにこだわるよりも大事なこと
- 事故やヒヤリハット報告をしやすくするには?
- 事故やヒヤリハット報告書は誰が書くの?
デイサービスで、事故やヒヤリハット事例が発生した時にはそれぞれの事案に合った報告書を提出することになります。
事故報告書は主に再発防止のため、ヒヤリハット報告書は主に事故の未然防止のための情報共有ツールになります。
事故やヒヤリハット報告ですが、デイサービスの職員を悩ませるのが事故とヒヤリハットの違いについてです。
デイサービスの中で事故とヒヤリハットの違いが明確でなく、管理者や生活相談員に「ヒヤリハットで書いて」と言われたからヒヤリハットにしているという方も多いかもしれません。
そこで今回の記事では、初めにデイサービスで『そもそもなんで、事故とヒヤリハットの違いを分ける必要があるのかを解説』(見解含む)していきます。
そのうえで、実際に事故とヒヤリハットの違いを明確にする方法について解説していきます。
最後の方では、事故・ヒヤリハット報告書は誰が書くの??問題にも触れていますので是非最後までご覧ください!!
この記事を書いている私に関して
- デイサービス勤務歴11年以上の経験の中で、介護職、生活相談員、管理者を経験する
- デイサービスの生活相談員や管理者(社会福祉士)として10年以上にわたり相談窓口として勤務する。
- ヒヤリハットをある時まで、火蟻ハットだと思い込んでいた。
事故とヒヤリハットは何故、違いを分ける必要があるの??
デイサービスで働く方の中には、「事故やヒヤリを分けずに全部事故報告書ではダメなの??」と思う方もいるかもしれません。
実はこの記事を書いている私もデイサービスで働き始めたばかりの頃は「わざわざ報告書を違うものに分ける必要があるの??」と思っていました。
ですが、事故とヒヤリハットは違いを明確にして分けておく必要はあります。
その理由の前提には、ハインリッヒの法則があります。
デイサービスで働く職員のほとんどは一度は聞いたことがあると思いますが、念のため『ハインリッヒの法則』は次の通りです。
1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、29件の軽微な事故の背景には300件のヒヤリハットが存在する。
ハインリッヒの法則は元々は工場の労働災害についてのリサーチによるものでしたが、介護業界も含め様々な業界で使われています。
見方を変えると、1件の重大事故を防ぐためには300件のヒヤリハット事案への対策をする必要があるということですね。
『30件の事故(1+29)』に満たないヒヤリハット事例をヒヤリハットだと認識して、何かしらの対策をする為に事故とヒヤリハットの違いを分けておくことになります。
事故とヒヤリハットの違いを分ける理由を、もう少し詳しく私の見解も含めてお伝えすると次の2つがポイントになります。
- ヒヤリハット事例を放置しないため
- 防げる事故を防ぐため
では詳しく解説していきます。
ヒヤリハット事例を放置しないため
デイサービスで事故とヒヤリハットの違いを分ける理由の1つが、ヒヤリハット事例を放置しないためです。
言葉を変えると、ヒヤリハットをヒヤリハットだと認識するためとも言えます。
デイサービスの中で、事故報告書とヒヤリハット報告書の違いを分けずに事故報告書に1本化した場合どうなるでしょうか??
『ご利用者に実害は出なかったけど、将来的に事故につながるような事案』はほとんど放置されるのではないでしょうか。
いわゆるヒヤリハット事例が、検討はもといヒヤリハット事例だと認識すらされないまま放置される可能性があるということですね。
先ほどのハインリッヒの法則を私なりにかみ砕いてみたいと思います。
ハインリッヒの法則をかみ砕くと
将来的に事故につながるような事案が『ヒヤリハット』と呼ばれ、このヒヤリハット事例を放置することが将来の事故につながる。
このハインリッヒの法則を前提に考えてみると、
ヒヤリハット事例を放置せずにヒヤリハット事例だと認識して、対策をしていくことが将来の防げる事故を未然に防止するために重要ということになりますね。
そのために、事故とヒヤリハットの違いを分けておく必要があるという考え方になります。
『ホッとしないでハッとする』を合言葉に取り組んでみましょう!!(わざわざ言わなくていいことですけど、、トシちゃんのファンじゃないですよ。。。。)
防げる事故を防ぐため
デイサービスで事故とヒヤリハットの違いを分ける理由の2つ目が、防げる事故を防ぐためです。
ここまで解説してきた内容ともほとんど重なるのですが、ヒヤリハットをヒヤリハットだと認識できて初めて事故の未然防止につながっていきます。
ヒヤリハット報告を正しく活用できれば、防げる事故を未然に防止することにつながります。
例えば次のような事例を紹介します。
デイサービスの中で、ご利用者が共用するベッドがあります。
A様が共用ベッドを使用した時は高さが丁度良かったのですが、
その後にB様が共用ベッドを使用した際に、共用ベッドの高さが低かったため何度も勢いを付けながら立ち上がろうと挑戦していました。
この事例を、「なんとか立てているし、別に大丈夫」と見逃してしまうと、どんなリスクがあるでしょうか??
考えられるリスクの内1つは、いずれB様が尻もちをついて圧迫骨折につながる可能性があります。
事故とヒヤリハットの違いを分けずに一緒くたにしてしまうと、こういった「今、大丈夫」事案が見逃され本来防げるような事故も事故として発生する可能性があります。
デイサービスの対策で防げる事故すらも防げないことになってくるのです。
ここからは補足ですが、ここではあえて『防げる事故を防ぐ』という表現をしています。
デイサービスの中で、ことヒヤリハットの話になると『事故ゼロを目指す』ためと思われがちです。
ですが人が動く以上、事故ゼロは不可能です。職員がいくら神経をとがらせていようと防ぎようがない事故もあります。
防ぎようのない事故は、職員がリスクに気付いて事故が起きた時に被害をできる限り軽減できる対策をしていくという考え方も持っておきましょう。
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事故とヒヤリハットの違いは事故区分ごとに明確にする
デイサービスの中で起きた事故事案に関して、介護事故なのかヒヤリハットなのかその違いを明確に分けるのは難しいです。
事故ならば事故報告書を書く必要がありますし、ヒヤリハットならヒヤリハット報告書を提出する必要があります。
ちなみに介護事典(デイに1冊あると便利なので下にリンクを貼っておきます)の中で、『ヒヤリハット』は次のように説明されています。
医療や介護の場面で、患者(利用者)に事故が起こりそうになった状況を表すことば。
または、事故が起こらないように注意すべき事項を指す。
出典:介護事典(講談社)
介護事典ではヒヤリハットは事故が起こりそうになった事案や、事故を未然に防ぐために注意すべき事案を指しています。
ヒヤリハットの説明に『事故』という言葉が使われていますので、ヒヤリハットと事故の違いを明確にするには介護事故について定義づけをしていく必要があるということです。
前段が長くなってしまいましたが今回お伝えしたい内容は、
介護事故の定義づけについて事故区分ごとに明確にしておくと介護事故とヒヤリハットの違いが分かりやすくなりますよ
ということです。
それを踏まえてここからは、次の2つに分けて解説をしていきます。
- 事故区分とは何か?
- 事故区分ごとに事故かヒヤリハットかを分けるにはどうればいい??
まず今、介護事故を区分していないデイサービスでは、事故を種類ごとに区分していくところから始めましょう。
介護事故を区分することで、ヒヤリハットとの違いを明確にすることができるようになります。
それでは解説していきます。
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事故区分とは何か?
デイサービスの中での事故区分とは、事故の種類のことです。
デイサービスの中で起こる事故は多岐に渡ります。事故を種類ごとに区分しておくことで、どの種類の事故が起こりやすいのかなど管理がしやすくなります。
では具体的に介護事故にはどのような種類があるか見ていきましょう。
- 転倒
- 転落
- 入浴中の事故
- 誤薬
- 誤嚥
- 誤飲、異食
- 離設
- 利用者同士のトラブル
- 器物破損、紛失、盗難
- 送迎中の事故
- 職員の不適切な対応
- 個人情報の流出
- その他
介護事故をざっとこのような事故区分になるでしょうか??
デイサービスによってはもっと細かく分類している事業所もあるかもしれませんね。
ちなみに統計上、デイサービスで一番起こりやすい事故は転倒事故です。
事故区分ごとに事故かヒヤリハットかを分けるにはどうればいい??
介護事故を区分ごとに分けましたが、では実際に起きた事案が事故なのかヒヤリハットなのかの違いをどのように分けていくといいでしょうか??
私のデイサービスでの取り組みは、事故区分ごとに事故とヒヤリハットの違いを分けています。
具体的には次の表をご覧ください。
事故区分 | 事故となるケース | ヒヤリハットとなるケース |
転倒 |
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転落 |
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入浴中の事故 |
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誤薬 |
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誤嚥 |
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誤飲、異食 |
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|
離設 |
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利用者同士のトラブル |
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器物破損、紛失、盗難 |
|
|
送迎中の事故 |
|
|
職員の不適切な対応 |
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個人情報の流出 |
|
|
介護事故とヒヤリハットの違いを分ける時にご利用者に実害がでたかどうかで区別することもありますが、基本的にそれだけでは足りないと思います。
事故区分によって、重要度も変わりますので実害が出なくても事故として区分しておくことで再発防止に臨むようにしましょう。
事故区分ごとに、どこからが事故でどこまでがヒヤリハットなのかの違いを分けておくようにしましょう。
上の表では事故とヒヤリの違いをざっと分けていますので、デイサービスの実情に合わせて違いを分けてみるといいと思います。
ここまではデイサービスの中で事故とヒヤリハットの違いを分ける理由や、違いの分け方について解説してきました。
そんなところで何なのですが、事故とヒヤリハットの違いにこだわりすぎることにも問題があります。
デイサービスで事故かヒヤリハットかその違いにこだわるよりも重要な事がありますのでお伝えしていきます。
事故とヒヤリハットの違いにこだわるよりも・・・
デイサービスの中で事故やヒヤリハットに該当する事案が起きた時にその事案が事故なのかヒヤリハットなのかはそこまで重要ではありません。(こんなことを言うと怒られそうですが・・・)
私は事故かヒヤリハットかその違いにこだわるよりも重要なことは次の3つだと考えています。
- 同じ事案が発生しない(事故につながらない)ように再発防止すること
- 起きた事案が『事故』や『ヒヤリ』だと認識できること
- 事実の報告ができること
もちろん事故かヒヤリハットかその違いを分ける理由や、違いの分け方はここまで解説してきた通り重要であることに間違いはありません。
ですが、デイサービスの中で事案が発生した時に『事故なのかヒヤリハットなのか』の議論で時間を費やすよりは、それよりも重要な3つのことに目を向けていく方が意味のある時間になりますよということです。
では具体的にどういうことなのか解説していきます。
同じ事案が発生しない(事故につながらない)ように再発防止すること
デイサービスで介護事故やヒヤリハットの違いにこだわるよりも、重要なことの1点目は同じ事案が発生しないように再発防止に取り組むことです。
デイサービスで介護事故やヒヤリハットが発生した時に一番重要なのが再発防止と言ってもいいですよね。
デイサービスの中で、介護事故やヒヤリハット事例が発生した時には早急に次の3点に取り組みましょう。
ポイント
- なぜその事案が発生したのか考える(原因)
- 原因をもとに次に同じことが起きない(事故につながらないように)防止策を考える(対策)
- 防止策を実行する(改善)
事故報告書であれば、同じ事案や似たような事案を発生させないために考える。
ヒヤリハットであれば、事故につながらないように対策を考えるというような流れになります。
デイサービスの中で、介護事故なのかヒヤリハットの違いにこだわってどちらの報告書を出すべきか悩んでいると再発防止までの時間も伸びてしまいます。
事故かヒヤリハットかの違いにこだわってムダな時間が過ぎるよりは、まずは起きた事実を報告して改善につなげていきましょう。
ちなみに介護事故なのかヒヤリハットなのかどうしても悩むようであれば、事故報告書として提出することをオススメします。
事故報告書であろうと、ヒヤリハット報告書であろうと起きた事実や改善への道筋が変わるわけではありません。
事故やヒヤリハットの違いを分けていたとしても、違いの境界線に掛かるような事案は必ず発生します。
事故かヒヤリハットかその違いに悩んだ場合には、事故報告書として提出し速やかに必要な対応に行動を移しましょう。
-
【社会福祉士が解説】デイサービス事故報告書の質を高める書き方と5つのNG行動を解説!!
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起きた事案が『事故』や『ヒヤリ』だと認識できること
事故やヒヤリハットの違いにこだわる前に、そもそもその事案が事故やヒヤリハットだと認識できることが重要です。
先ほどもお伝えしたような「今、大丈夫」事案を、ヒヤリハットだと認識しましょうということですね。
特にデイサービスでのヒヤリハットは、ヒヤリハットだと認識されないまま放置されている場面が多くあります。
- 靴の滑りが悪くつまずいたけども転ばなかった
- 刻みの方に常食が提供されたが食べる前に気が付いた
- ホール内からいつの間にかA様がいなくなっていたが、トイレに入ってただけだった
例えば上のような場面では、ご利用者への実害が無かったから「あぁよかった」とその場の出来事として終わっているケースがあります。
ですがデイサービスの職員としては、ヒヤリハット事例だと認識して同じことが起きないように対策をしていく必要があります。
同じ靴を履き続けたらご利用者いずれ転びますし、常食が提供されたらいずれ誤嚥事故につながります。
いつの間にかいなくなって、外で警察に保護される可能性もありますよね。
起きたことを放置した将来に、どんなリスクがあるのかを想像できる力が必要
ヒヤリハット報告書や事故報告書が1ヶ月のうちに1枚も提出されないデイサービスはリスク管理の面で黄色信号と考えるようにしましょう。(枚数が全てというわけではありませんが)
事故やヒヤリハット報告書を出しやすい仕組みづくりや、ヒヤリハットや事故だと認識できるリスクマネジメントを行う必要があります。
事実の報告ができること
事故やヒヤリハットの違いにこだわるよりも重要なことの3つ目は、事実の報告ができることです。
「事実の報告?そんなの当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、実は意外とできていない場合があるのです。
私のデイサービスでの勤務経験上、事故報告やヒヤリハット報告をする時に過小評価をして報告する人が意外と多いのです。
例えば次のような事例ですね。
- 転ぶ時に、私が支えたので思いっきり転んだわけじゃないんです
- 頭を壁にぶつけたんですけど、音は大したことなかったです
- 間違えたのは漢方なので、大したことないです
この事実をデイサービスの他の職員に確認してみると「いえ、転んだ後に支えていましたよ」とか「結構すごい音がしていましたよ」と報告とは違う返事が返ってくることが多いですね。
「漢方だから大したことない」は、現実逃避でしかないですよね。。。
事故報告やヒヤリハット報告の過小評価が起こる原因は、報告書を提出することが懲罰のようなマイナスイメージを持っているからですね。
事故報告かヒヤリハットかの違いは、罪の重い軽いではありません。
事故報告であろうと、ヒヤリハット報告であろうと、自分が見たり体験した事実を正確に報告することで再発防止にもつながるということを認識しておきましょう。
事故やヒヤリハット報告書を出しやすい雰囲気づくり
デイサービスの管理者や生活相談員、介護リーダーの中には「いくら言っても事故・ヒヤリハット報告書が積極的に提出されない」と悩む方もいると思います。
デイサービスの職員から事故やヒヤリハット報告書が提出されない理由として次のようなことが考えられます。
- 報告書を懲罰のように感じている
- このくらいであれば報告しなくてもいいかと思う
- ヒヤリハットや事故事例だと感じていない
- 意図的に隠そうとしている
- 文章を書くのが苦手で書きたくないと思っている
介護事故報告書やヒヤリハット報告書は、様々な理由で提出を敬遠されがちです。
ですが、介護事故報告書やヒヤリハット報告書は職員の要因に左右されることなく、再発防止(改善)の為に提出される必要があります。
デイサービスの中で、大きな事故につなげないために介護事故報告書やヒヤリハット報告書は見逃さずにどんどん提出していく必要があります。
では、デイサービス職員が事故やヒヤリハット報告書を提出しやすくするにはどのような取り組みが必要でしょうか??
デイサービスで事故報告書やヒヤリハット報告書を提出しやすくなる4つの取り組みを紹介していきます。
- 反省文ではなく報告書だということを職員全体に刷り込んでいく
- 研修を行う
- 報告書の形式を変える
- 報告書をチラシ感覚で置いておく
事故やヒヤリハット報告書は職員個人が出そうと思っていても、職員全体の中に出しづらい雰囲気があるとストッパーになってしまいます。
デイサービスの職員個々人が重要性を理解している場合は、職員全体の雰囲気に目を向けて取り組んで必要があります。
それでは詳しく解説していきます。
反省文ではなく報告書だということを職員全体に刷り込んでいく
事故・ヒヤリハット報告書を提出することがマイナスイメージだという雰囲気があるデイサービスでは、まずはそのイメージを払拭することから始めましょう。
ここまでもお伝えしてきた通り、デイサービスにおける事故・ヒヤリハット報告書はあくまでも報告書です。
反省文ではなくて報告書だということを職員に刷り込んでいきましょう。
反省文ではなく報告書だと職員に刷り込むために、デイサービスの中でやるべきことは次の通りです。
- 上司は事故やヒヤリハットの報告を受けた時に「ありがとう」と感謝する
- 反省は権利だけど、報告は義務だということを繰り返し伝えていく
- 『誰が』起こしたかではなく、『なぜ』起きたかに目を向ける
- 報告は業務の一環なので、報告書は就業時間で書けるように調整する
管理者やリーダーは、事故・ヒヤリハット報告書の提出が定着するまで地道に繰り返していくようにしましょう。
反対にやるべきでないことは次の通りです。
- 事故やヒヤリハットの報告を受けた時に「なんでこんなミスをするんだ」と叱責する
- 提出する人によって厳しく見たり、優しく見たりと態度を変える
- 「自分で起こしたミスなんだから」と言って残業をさせて報告書を書かせる
- 職員個人に責任を追及する
デイサービスの中で、事故・ヒヤリハット報告書の提出を定着させたい時に、管理者やリーダーが理不尽な態度を取ったり頭ごなしに叱責すると職員は委縮してしまいます。
個人への責任追及や、人によって態度を変えたりしないように気を付けましょう。
実は『デイサービスの職員個人』の多くは、事故・ヒヤリハット報告書が反省文ではなく報告書だということは理解しているのです。
それは、職員個人と話してみるとよく分かります。
ですが、それが『デイサービスの職員全体』という集団になるとどうしても責任を追及されたり、見せしめ・吊るし上げに遭っているような感覚になってしまうのですね。。
特にお局様のような職員がとにかくミスした部分をつつくような環境下では、余計にその感覚が強くなります。
ここがデイサービスで事故・ヒヤリハット報告書の提出を定着させたい場合の最初の難関のようにも感じます。
逆に言うと、職員全体が出しやすい雰囲気を作ることができれば、報告書が出しづらいという雰囲気も解消できるとも言えるでしょう。
デイサービスの管理者やリーダーは事故・ヒヤリハット報告をされる時の雰囲気にも気を配りながら、反省文ではなく報告書だということを職員全体に刷り込んでいく必要があります。
研修を行う
研修は単純に知識を増やしたり、技術を身に着けるだけでなく『意識させる効果』があります。
研修を行うことで、事故やヒヤリハット報告書を書くことに職員の関心が向くようになります。
- どんな事例がヒヤリハットになるのかな?
- 自分のスキルアップのためにヒヤリハットを書いてみようかな
- そういえば最近○○様の歩き方が不安定になってきているな
- そういえば前にあんな事故があったなぁ
何かしら、職員の意識が事故やヒヤリハット報告書に向いた時に書くことを習慣化できるように関わって行くということですね。
例えば、先ほどお伝えした事故やヒヤリハットの報告の時の雰囲気作りもその1つですよね。
職員がいきなり変わることは難しいので、地道なやり取りや配慮が事故報告やヒヤリハット報告をしやすくなり徐々に定着していくことにつながっていきます。
とはいえ、もちろん研修を行う以上はその内容も重要です。
デイサービスの職員が事故・ヒヤリハット報告を敬遠している要因を探りながら、それを解決できるような内容だといいでしょう。
職員が「ここが難しいから書きたくないんだよな」と感じる部分に研修内容がビタリとハマると、事故・ヒヤリハット報告に気持ちが向かいやすくなります。
事故報告やヒヤリハット報告の研修に関しては次のようなテーマがありますので参考にしてみてください。
- なぜ事故・ヒヤリハット報告書の提出が必要なのか?
- 報告書の内容の書き方
- 架空のヒヤリハット事例を検討してみよう
- 自分たちのデイサービスで考えられるヒヤリハットや事故を考えてみよう
例えば架空のヒヤリハット事例検討では、『架空』のというところが重要ですね。
架空の設定にすることで、誰も責任を負うことなく自由な発言ができますので入門としてはかなりオススメのやり方かなと思います。
私は個人的に、理論など黙って聞いている研修はあまり好きでないので演習のように実践ができる研修をオススメします。
報告書の形式を変える
デイサービスの事故やヒヤリハット報告書は、書く欄が多すぎて煩わしく思う方がいます。
私のデイサービスでは、事故報告書とヒヤリハット報告書の様式は変えてはいるものの特に事故報告書は文字を書くスペースが多いです。
そんな中でもできる工夫の1つとしては、✓や○で済ませられる部分は✓や○で済ませてしまうことです。
例えば、次のような部分は✓や○で済ませられる部分です。
- 事故区分
- 介護度
- 発生場所
- 外傷箇所
事故やヒヤリハット報告書は懲罰や反省文では無いので『書くこと』が重要なのではなく『事実を記録して改善につながる』ことが重要です。
そのために簡素化できる部分は、報告書の中から簡素化していくようにしましょう。
事故報告書やヒヤリハット報告書が、文字を書く部分が多くて不便を感じているデイサービスは様式の変更にも取り組んでみてください。
報告書をチラシ感覚で置いておく
少し語弊のある言い方かもしれませんが、街頭チラシをとる感覚で事故やヒヤリハット報告書が置いてあると書きやすさUPにもつながります。
私のデイサービスでは以前、事故・ヒヤリハット報告書を書く際には一度原本ファイルから用紙をとって一回一回コピーしてから使うスタイルをとっていました。
ですが、それでは職員が「書くのが気が重いな」と感じる要素を1つ増やしていることになります。
そうではなく、常に事故・ヒヤリハット報告書は何枚か印刷をしておいてすぐに手に取れたり目に着きやすい場所に置いておくことで気軽に報告書を書くことができるようになります。
事故・ヒヤリハット報告書を手軽な場所に置いておくことで次のような効果があります。
- 事故やヒヤリハット事例を思い出しやすくなる
- 書くまでの煩わしさが減り、書きやすくなる
めちゃくちゃ効果があるわけではないかもしれませんが、職員にとってのマイナス要素を1つ省くことで提出しやすい効果にもつながります。
報告書は誰が書く問題
最後は補足的にですが、事故報告書やヒヤリハット報告書を提出する時の誰が書く問題について触れたいと思います。
結論から先にお伝えします。
報告書を書く人
事故・ヒヤリハット報告書は第一発見者が書きます。
第一発見者が職員以外の場合は、第一発見者から一番最初に情報提供された職員が書きます。
事故報告書やヒヤリハット報告書の取り組みに関して話を進めた時に必ずと言っていいほど発生するのが『誰が書くの??問題』です!
ここで解決すべきなのは「自分が起こしたミスじゃないのに、最初に見つけた私が書かなくちゃいけないの?」という職員の思いですよね。
デイサービス管理者の私としては「はい、そうです」としかお答えができなくて、その理由は「反省文じゃなくて報告書だから」です。
要は事故・ヒヤリハット報告では、その事案を発見した経緯もとても重要なのです。
例えば、ご家族からの電話で事案が発覚した場合、なぜそれが起きたのかに加えて、なぜ帰宅前に職員が気付けなかったのかを考えなければいけません。
もう少し具体的な事例を出してみます。
A様のご利用日翌日にA様の娘様より電話連絡があり、生活相談員が電話対応する。
「A様の連絡帳に返すべき目薬が入っていなかった。」という旨の連絡だった。
目薬の対応をしていた看護職員に確認すると「もしかするとB様の連絡帳に入れてしまったかもしれない」とのこと。
B様宅に連絡をすると「連絡帳に目薬が入っていた」ことの確認ができる。
このケースでは実際に目薬の対応をしたのは看護職員ですが、報告書を書くのは最初に電話を受けた生活相談員です。
どういう経緯でその事案が発覚したのかによっても、改善策に影響しますので生活相談員が報告書を書くということになります。
反省文であれば誰が書くのかが重要になります。
ですがここまで何度も説明した通り事故やヒヤリハット報告書は報告書なので「誰が書く」よりも『事実を書く』ことが重要です。
まとめ
今回は【事故とヒヤリの違い】デイサービスでの事故とヒヤリハットの分け方を解説!というテーマでお伝えしてきました。
デイサービスで事故とヒヤリハットの違いを分ける理由は、ヒヤリハットを見逃さずに防げる事故を防ぐためです。
事故やヒヤリハットの違いを分けるためには、事故区分ごとに事故とヒヤリハットを分けていきましょう。
具体的な内容は本文で表で違いを分けていますので、ぜひご覧ください。
事故かヒヤリハットか、その違いにこだわりすぎることで改善までの時間が余計にかかることになります。
それよりも、
- 再発防止に取り組む
- 事故やヒヤリハットだと認識する
- 事実の報告ができる
この3点が重要になります。
デイサービスの事故報告書やヒヤリハット報告書は職員が提出までのハードルを高いと感じることもあります。
職員全体の中で出しづらい雰囲気があると、提出することに気が重いと感じてしまいます。
また報告書の様式があまり複雑だったり、分かりづらい場所に保管されていることも事故・ヒヤリハット報告書を出しづらい要因の1つになります。
報告書が出しやすくなるような仕組み作りにもデイサービスの中で取り組んでみましょう!
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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