デイサービス(デイケアも含む)は、ご自宅から日帰りで利用できる介護サービスです。
デイサービスの介護職員の仕事内容でも紹介したように、デイサービス特有の業務として送迎業務があります。
デイサービスの送迎業務は毎日決まったルートを走るわけではありません。
- 曜日によって変わるご利用者宅への訪問
- 新規ご利用宅訪問
- 体験利用者宅への訪問
- 工事中によるルート変更
デイサービスの送迎業務には臨機応変な対応が求められることもあり、送迎業務に不安を抱える方もいるかもしれません。
今回の記事では以下のことをお伝えします。
- デイサービスの送迎業務の内容
- デイサービス送迎の安全運転対策
- 送迎マニュアルの目的と内容
- デイサービス送迎はどこまで行うか
- 送迎業務の持ち物
デイサービスの職員が送迎時に抱える不安を払拭できるような内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
デイサービスの送迎業務は基本報酬に含まれるサービス
デイサービスの送迎業務は、基本報酬に包括されているサービス内容の1つです。
そのため、デイサービスの中で行うような次のような業務も行う必要があります。
- 送迎時の乗降介助
- 車内での体調の見守り
- 移動時の必要な介助
- 体調不良時の対応
少しややこしいのが、デイサービスの送迎時間はサービス提供時間には含まれないということです。
そのため、デイサービスの送迎はサービス提供時間に間に合うように行う必要があります。
時間に追われることで職員の気持ちが焦ってしまい交通事故などの思わぬ事故に直結する場合もあります。
デイサービスの職員が送迎業務に対して抱える不安を解消するためにも、安全運転に関する対策やマニュアルの整備が必要です。
デイサービス送迎時の安全運転の3つの対策
デイサービスの送迎で安全運転を行うためには、デイサービスの中で事前に対策を行う必要があります。
デイサービスの送迎で安全運転を行う基本的な対策は3つあります。
- ルートを事前に確認する
- 交通ルールの遵守
- 事業所でのルールを決めておく
この3つの対策を行うことで、交通事故を起こしてしまう確率もグッと減らすことができます。
それだけでなく、運転をする職員の気持ちにも余裕が生まれ安全運転に集中することができるようになります。
ルートを事前に確認する
先ほどもお伝えしたように、デイサービスの送迎では決まったルートを走るわけではありません。
- 曜日ごとに変わるご利用者宅
- 新規ご利用者宅
- 体験利用者宅
- 工事中によるルート変更
上記のような様々な要因で一定の決まったルートを走れるわけではありません。
知らない道を走るのはドキドキして不安に感じますよね。
ですので、送迎前には事前に走るルートを確認することをオススメします。
具体的には、以下のことを行います。
- 送迎ルートの道順の確認
- 送迎ルート上の危険箇所の共有
- 事故多発地帯の共有
特に危険箇所の確認や、事故多発地帯の共有は普段から行なっておくことで、運転手も気をつけて運転することができます。
交通ルールの遵守
当たり前のことなのですが、交通ルールを守ることは安全運転の基本ですよね。
ですが、デイサービスの送迎は時間に追われる場合があります。
そんな時には、送迎の運転手は段々と気持ちが焦ってきてしまいます。
すると、送迎担当の職員が次のようなことをしてしまう可能性が出てきます。
- 黄色信号を突破する
- 法定速度を超過する
- 一時停止を無視する
- 横断者を無視する
- 車間距離を詰める
このような行為は思わぬ事故に繋がったり、警察に捕まったりと百害あって一利なしです。
こんなことを起こさないためにも、普段からデイサービスの中で交通ルールを遵守することが最優先だと共有しておく必要があります。
事業所でのルールを決めておく
送迎時のルールをデイサービスの中で決めておくことも安全運転につながる対策です。
例えば、雨や雪が降ったりすると、道路が混んで送迎がサービス提供時間に間に合わないようなことがあります。
そんな時には次のようなルールを事前に決めておきます。
参考
時間よりも安全運転を優先させる。
こんな当たり前のような事なのですが、デイサービスの中でルールとして決めておくことで運転手は気持ちに余裕ができます。
他にも考えられるルールがありますので紹介していきます。
- 準備ができていないご利用者には再度お迎えに来る事を伝え、次の方のお迎えを優先させる
- 送迎が予定よりも遅れそうな場合は、安全な場所に停車してデイサービスに連絡を入れる。
- ご利用者の応答がない場合には、ご利用者宅に電話する。それでも応答がない場合にはデイサービスに連絡を入れ、その場を離れる。
不測の事態が起きた場合でも運転手が動揺することのないように、予期される事態に対してどういう行動をとるかというルールをあらかじめ作っておくようにしましょう。
そのルールを決めたものがマニュアルの作成になります。
デイサービス送迎業務のマニュアルの目的
デイサービスの送迎は日々繰り返し行われる業務です。
送迎業務は職員が一人で対応することも出てくるため、不安を抱えやすい業務でもあります。
デイサービス職員の不安を解消したり、不測の事態に備えるためにも、マニュアルの作成が必要になります。
とはいえデイサービスの送迎マニュアルの内容には、これと言った決まりはありません。
ですので、デイサービスの送迎マニュアルを作る際はまずはマニュアルを作成する目的を明確にする必要があります。
送迎業務のマニュアルを作る目的は主に次の通りです。
- 送迎全般に関するルールの共有
- 車両の管理、操作ルールの共有
- 事故や緊急時の対応の共有
- 乗降介助のルールの共有
- 安全運転の意識強化
私のデイサービスでもマニュアルの目的を明確にして作成することで、送迎時のルールの統一や不測の事態への対応の統一ができるようになりました。
もちろん作るだけではなく、内容を職員全員で理解しておくことが大事ですので忘れないでくださいね。
デイサービス送迎業務のマニュアルに盛り込む内容
さてデイサービスの送迎マニュアルの目的が決まったら、いよいよ内容ですね。
送迎マニュアルには、マニュアルを作成した目的を達成するための内容を入れていくわけです。
とはいえ、デイサービスによって実情は変わるので独自の内容を入れていく必要があります。
具体的には送迎マニュアルには、次のような内容を盛り込んでそれぞれの内容を詳しく説明していく形をとると職員にもわかりやすいでしょう。
- 送迎前後のルール
- 送迎中(運転時)のルール
- 送迎車両操作のルール
- 事故発生時の対応
- ご利用者急変時の対応
それぞれの内容に関して具体的にどのようなことを書いていくと良いのか説明していきます。
送迎前後のルール
送迎前後のルールとしてマニュアルに書いていくのは、次のような内容です。
- 出発前の送迎順の確認方法
- 車両使用前後の車両点検
- 車両使用後のガソリン給油
- 車両清掃
送迎前後のルールとしては、車両の点検や出発前の送迎順の確認方法などがあります。
私のデイサービスで行っている方法を簡単に説明していきます。
- 出発前に、運行表(後ほど説明します)に迎えに行くご利用者の名前を書いておく
- 出発前に決められた車両点検項目の点検を行い、運行表にサインする
- 車両使用後はメーターが半分を切っていたら運転手が給油を行う
- 各車両の担当職員は、毎週1回車両の清掃を行う。
車両の点検には次のような表を使っています。
送迎で車両を使用する際のルールを決めておくことで、送迎の抜けや車の不具合によるトラブルなどを回避することができます。
送迎中(運転時)のルール
送迎中のルールとしてマニュアルに書いていくのは、次のような内容です。
- 交通ルール遵守
- サービス提供時間に間に合わない場合の対応
- ご利用者の体調確認のルール
- 乗降介助のルール
送迎中は、交通ルールを守ること(特に速度超過や一時停止無視などを違反しないこと)やサービス提供時間に間に合わない場合の対応などを書いています。
サービス提供時間に間に合わなそうな場合は安全な場所に停車して携帯電話でデイサービスに連絡をいれる。
こんな感じで、送迎マニュアルにルールを明記しておくことで職員が時間に焦ることなく運転ができるようになります。
送迎車両の操作のルール
送迎車両のルールとしてマニュアルに書いていくのは、次内容です。
- リフト車の操作
送迎車両の操作ルールとして入れる内容は、リフト車の操作です。
車椅子のご利用者でも乗ることができるリフト車には、ハイエースのようなバンタイプから軽自動車まで様々あります。
車が変わると操作方法も変わりますから、デイサービスで所有しているリフト車の操作を載せるようにしましょう。
私の失敗体験もありますので紹介していきます。
私のデイサービスでは、リフト車を3台持っていてそれぞれ操作方法が違います。
新入職員にもそれぞれの操作方法の研修も終わり、いざ送迎をお願いしたらリフト車の前で動きが完全に止まってしまいした。
「リフト車の操作が分からない」とのこと。
後で聞いたら「3台のうち2台は完璧にわかっていたが、よりによって自信がなかった車両の送迎担当になってしまった」とのこと。
この経験以降、リフト車の研修を行う時にはそれぞれの車両ごとに操作のチェックリストを作って合格したら研修修了という形をとるようにしました。
それぞれのデイサービスでも様々な工夫が必要かもしれません。
事故発生時の対応
送迎前後のルールとしてマニュアルに書いていくのは、次のような内容です。
- 物損事故を起こした場合
- 車両同士の事故を起こした場合
- 車両同士の事故を起こされた場合
- 人身事故を起こした場合
特に事故発生時やご利用者の急変時には、一人で送迎業務をしている職員は動揺しやすい事案です。
ここの内容はできる限り簡単にわかりやすく職員が取るべき行動を書いておくようにしましょう。
例えば、物損事故の場合には次のような事を書いておきます。
- 安全な場所に停車する。
- ご利用が乗っていたら体調確認
- 警察(110番)に連絡
- デイサービスに連絡(0000-1234-5678)
- 警察の到着を待つ
送迎中に事故を起こしてしまった場合、冷静な判断ができなくなることがあります。
そのため私のデイサービスでは、マニュアルとは別にフローチャートにしたものを送迎に持っていくファイルに挟んでおくようにしています。
デイサービスは連絡の窓口として、必要に応じて別の車両で現場に向かいご利用者の送迎を変わるなどの対応をする必要が出てきます。
大事なことは万が一、事故が起きた場合に対応ができるようにすることです。
ご利用者急変時の対応
ご利用者急変時の対応としてマニュアルに書いていくのは、次のような内容です。
- ご利用者が嘔吐した場合
- ご利用者が意識喪失した場合
- ご利用者の転倒した場合
ご利用者急変時の対応は事故発生時と同じように、特に職員が不安を抱える部分です。
デイサービスにいる間は、看護職員や他の職員もいるので総合的に判断ができます。
ですが、デイサービスの送迎時は職員が1人になることもあります。
そんな状況でご利用者の急変がおきることは職員にとっても精神的な負担になります。
事故発生時の対応と同じで分かりやすく明記する必要があります。
特に、現場の判断で119番通報をしていいのかどうかは、曖昧にせずに断定して書いておいた方がいいでしょう。
デイサービスの契約時に、送迎中の急変時には現場職員の判断で119番する場合があることも同意を頂いておくことも対策の一つになります。
デイサービス送迎の基本は玄関から玄関まで
デイサービスの送迎業務でよく次の質問を受けることがあります。
デイサービスの送迎は自宅内まで行うの?
私が出す答えは「デイサービスの送迎の基本は自宅の玄関から玄関まで」です。
というのも、自宅内まで送迎を行って介助することは、長時間にわたって車内に他のご利用者を放置する場合が出てくることになるからです。
一律に「できません。」とお断りすることも方法の一つなのですが、デイサービスの中で「○○分以内の介助であれば可能」など条件を決めたうえで受け入れを行うことをおススメします。
例えば、自宅内まで送って排泄介助をしてから場を離れるなどは、時間がかかりますし車内に待っているご利用者へのリスクも大きいですよね。
ですが、送ったついでに自宅内の電気をつけることは数秒程度で終わることなので送迎の一連の動作で行うことができます。
ですのでその程度の要望であれば、受け入れてもそこまで大きな問題は抱えずに済むかなと思います。
込み入った要望を受け入れるにはケアプランに組んでもらったり、そもそも受け入れないという選択も方法の一つです。
デイサービス送迎時に必要な持ち物は4つ
ここからは、デイサービスの送迎時に必要な持ち物について紹介していきます。
デイサービスの送迎時には、必要最低限の持ち物を準備する必要があります。
送迎時に必要な持ち物は次の4つです。
- 送迎ファイル(車両運行表・運転日誌)
- 体温計
- 体調不良への対応グッズ
- 携帯電話
これらの持ち物は安全に送迎を行ったり、不測の事態に備えるために必要となります。
万が一、不測の事態が起きた場合に成す術無しにならないように備えておきましょう。
それぞれの持ち物がなんのために必要かお伝えしていきます。
送迎ファイル(車両運行表・運転日誌)
送迎ファイルには車両運行表や運転日誌などと呼ばれるものを綴じていきます。
車両運行表には次の内容を盛り込んでいきます。
- 車両の運行を行う年月日
- 運転手、添乗者
- 送迎を行うご利用者名
- 車両点検の記録
これらは運行の記録になるので、自分が送迎を行うご利用者の確認や車両点検の記録を残しておくことができます。
送迎前に、送迎作成担当職員によって決められた送迎順を運行表に転記するようにしましょう。
プラスαで、給油の記録やメモの欄があるといいかもしれません。
以下のようなイメージで、私のデイサービスでもこれに近い形の書式を使用しています。ExcelやWordでも簡単に作成することができます。
送迎ファイルには、運行記録の用紙とは別に綴じておくといいものがあります。
- 事故発生時の対応フローチャート
- ご利用者の急変時の対応フローチャート
- ご利用者の緊急連絡先表
これらを送迎ファイルに入れておくことで、様々な不測の事態にも迅速に対応できるようになります。
その分、個人情報も一緒に管理することになるので、取り扱いに関しても十分に注意が必要です。
送迎ファイルは、フラットファイルのような物をつかうと管理がしやすいでしょう。
体温計
体温計は以前までは、インフルエンザの流行時期などに限定して送迎に持ち出していたデイサービスも多いでしょう。
ですがコロナ禍の送迎時において体温計は、常に必須の持ち物となっています。
乗車前に体温を計ることで、ご利用者が万が一発熱をしていた場合に休んでいただくように対応ができます。
特に送迎車は換気をしているとはいえ、狭い空間です。
乗車前に臨機応変な対応ができるに越したことはないです。
体調不良への対応グッズ
体調不良への対応グッズとしては、次のような物を準備しておきます。
- ビニール袋
- 新聞紙
- ディスポーザブルグローブ
上記のものはエコバッグのような物にまとめて準備しておくようにしましょう。
送迎中に、ご利用者が万が一嘔吐した場合や気分不快を訴えた時に備えておくといいでしょう。
携帯電話
携帯電話はできれば、デイサービスで契約をして業務用として準備しておくことをオススメします。
デイサービスの送迎業務で携帯電話は、次のような場面で活用します。
- デイサービスに連絡する場合
- ご利用者宅に連絡する場合
- 警察に連絡する場合
送迎時に職員が持参して行くことで、様々な場面で活用ができます。
例えば、先ほどもお伝えしたような到着時間が遅れそうな場合にもデイサービスに一本連絡を入れる事ができるだけで気持ちが落ち着きます。
またデイサービスを連絡の窓口にしながら、他の送迎車両に代わりに送迎に行ってもらうなどの状況に合わせた対応ができるようになります。
携帯電話は、送迎以外の業務でも意外と活用場面がありますのでデイサービスで準備するようにしましょう。
まとめ
今回はデイサービスの送迎業務の安全運転の対策やマニュアル、持ち物などに関してお伝えしてきました。
デイサービスの送迎業務を安全に行うためには次の3つの対策を行います。
- ルートを事前に確認する
- 交通ルールの遵守
- 事業所でのルールを決めておく
デイサービスの送迎業務マニュアルは目的を持って作成し、目的に合わせた内容を盛り込んでいくようにしましょう。
送迎時に職員が持って行くものは必要最小限に抑えながらも、安全運転に集中できるものとして記事の中では4つの物を紹介しました。
- 送迎ファイル(車両運行表・運転日誌)
- 体温計
- 体調不良への対応グッズ
- 携帯電話
デイサービスの送迎業務は、ルールや環境整備を行うことで不安を解消できる業務です。
それぞれのデイサービスの実情に合わせた対策や送迎業務マニュアル作成を行なって、安全運転に努めていきましょう!