2022年4月からパワハラの防止措置が義務化されましたが、実際にどんなハラスメント対策を行えばいいのでしょうか?
今回は、デイサービスの管理者や役職者が抱えるハラスメント対策の疑問や悩みを解決していきます。
私はデイサービスで約7年の管理者経験をしてきました。
自分自身が過去にデイサービスでいじめを受けた経験から同じ被害者を生まないようにハラスメント対策を行なってきました。
正しいハラスメント対策は、スタッフを守ることや風通しの良い職場づくりに繋がります。
今回の記事を読んでいただくと、ハラスメント対策に必要な次のことがわかるようになります。
- デイサービスでハラスメント対策が必要な理由
- ハラスメントが起こる原因
- ハラスメントの予防方法
- 各ハラスメントの定義と事例
- デイサービスで実用できるハラスメント対策マニュアルの作り方
- ハラスメント発生時の対応
デイサービスでのハラスメントは起きることを前提に予防していく必要があります。
ハラスメント対策に関しての正しい知識を身に着けて、良い職場づくりを目指していきましょう!
デイサービスでハラスメント対策が必要な3つの理由
デイサービスでハラスメント対策を行う前提として、ハラスメント防止措置の義務化があります。
- 2007年4月 男女労働者に対するセクシャルハラスメントの防止措置義務(男女雇用機会均等法)
- 2017年 マタニティハラスメントの防止措置義務(男女雇用機会均等法)
- 2022年4月 すべての事業主に対してパワーハラスメント防止措置義務(労働施策総合推進法)
デイサービスによっては企業イメージの保護・実地指導対策(防止措置義務を守る)という意味合いでハラスメント対策を行う理由かもしれません。
ですがそれは、ハラスメント対策を行う本質ではありません。
デイサービスでハラスメント対策が必要な理由はデイサービスのスタッフを守るためです。
デイサービスにおけるハラスメント対策はあくまでもスタッフファーストで考えていく必要があります。
スタッフファーストで考えた結果として、企業イメージの保護や実地指導対策につながるというイメージですね。
それを踏まえたうえでデイサービスでは次の3つの理由からハラスメント対策を行なっていきます。
- 職員の安心と安全の確保
- 職場と労働環境の改善
- 職員の居場所作り
この3つの視点を核とすることで、ブレないハラスメント対策を行うことができるようになります。
それぞれ詳しく解説していきます。
職員の安全と安心の確保
デイサービスでハラスメント対策が必要な1番大きな理由は、職員の安全と安心の確保です。
ハラスメントには様々な種類がありますが、いずれのハラスメントでも一番苦しむのは被害を受けたデイサービスの職員です。
ハラスメントを受けた場合の職員の精神的・身体的ダメージは計り知れません。
ハラスメント被害者の職員は次のような思いもよらない事態に直面する危険性があります。
- 病気になる
- 事故を起こす
- 出勤できなくなる
このような事態になることを防ぐためにも、職員の安全と安心の確保のためにハラスメント対策を行う必要があります。
ハラスメント対策を行なっていないデイサービスでは、知らず知らずのうちにハラスメントの加害者になってしまう可能性もあります。
被害者も加害者も生まないという視点で、職員の安全と安心の確保を最優先に考えるようにしましょう。
職場の労働環境改善
実際にデイサービスでハラスメント対策に取り組んでみると分かりますが、ハラスメント対策を行うことは職場の労働環境改善につながります。
職場の労働環境を改善することは次のような利点を生みます。
- 離職率の低下
- 介護の質の向上
- コミュニケーションの活性化
ハラスメント対策で特に労働環境の改善を見込めるのが人間関係です。
ハラスメントは人が人に対して行うものですので、人間関係にも直接影響します。
次のグラフは介護労働安定センターが行なった「令和3年度介護労働実態調査」による前職を辞めた理由のうち介護職の数字だけを拾ったものです。
介護職が人間関係によって離職した割合は20.4%と他の離職原因に比べ最も大きな割合を占めています。
離職原因になった人間関係のうちすべてがハラスメントによるものというわけではありません。
ですが、ハラスメント対策を行うことはその周辺にある人対人の関わり方を改善することにもつながっていきます。
職員の居場所作り
デイサービスのハラスメント対策が必要な理由の最後は、職員の居場所作りのためです。
この場合の職員とは次の2つを指します
- ハラスメントの被害者(または被害者と思われる)となった職員
- ハラスメントの加害者(または加害者と思われる)となった職員
ハラスメントの被害者となる職員は、周囲には味方がいないと思うようになり疎外感や孤立感を味わうことになります。
ハラスメントの加害者となる職員は、周囲から「ハラスメントを行う人」というレッテルを張られ周囲から敬遠されます。
結果として両者が居場所を失うことになります。
実際に私も生活相談員になったばかりの頃に、先輩から次のようないじめを受けていました。
- 人間関係からの切り離し
- 精神的攻撃
- 個の侵害
当時は今ほどパワハラという言葉がメジャーでは無く、いじめられていたという認識が強かったように思います。
当時はいじめをしていた先輩と楽しく話している職員を見ると「あの人も結局先輩の味方なのか」と人間不信に陥り、孤独感を味わいました。
私の場合は運やタイミングが良く、新規立ち上げのデイサービス(今の職場)に誘ってもらったので被害がそれ以上大きくなることはありませんでした。
また、結局その先輩も私が辞めて間もなくセクハラ加害の疑惑がでて、居づらくなって職場を去ることになりました。
まさに、ハラスメントの被害者も加害者も居場所を失う典型的な例ですよね。。。
たらればを言い出したらキリがありませんが、当時にハラスメント対策が体制化されていたら違う結果になっていたのかなと思います。
デイサービスでハラスメントが起こる5つの原因
デイサービスでハラスメントが起こる原因を知っておくことは、ハラスメントを予防することにつながります。
デイサービスでハラスメントが起きてしまう原因には次の5つがあります。
- ハラスメントの定義が周知されていない
- 実用できるハラスメント対策マニュアルがない
- 1人がすべての権限を握っている
- 職場内でのコミュニケーション不足
- 価値観の違い
原因が一つ一つ孤立しているわけではなく、複数の要因が絡み合うことでハラスメントが起こる可能性があります。
5つの原因を理解して対策をすることでデイサービスでのハラスメント予防できるようになります。
では、デイサービスでハラスメントが起こる5つの原因を詳しく解説していきます。
ハラスメントの定義が周知されていない
ハラスメントの定義が周知されていないことはデイサービスでハラスメントが起こる原因になります。
ハラスメントの定義は後ほど、ハラスメントの定義づけと事例で詳しく解説していきますのでご覧ください。
どんな言動がハラスメントに該当するのか理解していないと、知らず知らずのうちにハラスメントを行なってしまう可能性があります。
ハラスメントを定義づけて周知することには次のようなメリットもあります。
- ハラスメントという概念そのものを職員に植え付ける
- ハラスメント対策への意識づけができる
『ハラスメント』に対してデイサービス全体が意識できることは、ハラスメントの防止にもつながります。
ハラスメントの定義づけは必ず行うようにしましょう。
具体的には、マニュアルにハラスメントの定義や実際の事例を盛り込んでおくといいでしょう。
実用できるハラスメント対策マニュアルが無い
デイサービスで実用できるハラスメント対策マニュアルが無いこともハラスメントが起きる原因となるでしょう。
先ほどのハラスメントの定義が周知されていないこととも重複します。
そもそもハラスメント対策のルールが作られていなければ、対策のしようがないですよね。
ですが、ただハラスメント対策マニュアルがおいてあればいいというわけでもありません。
大事なことはあなたのデイサービスで実用できるマニュアルであるということです。
インターネットから拾ってきたテンプレートをそのまま印刷して置いてあるマニュアルは、正直意味がありません。
ただの紙の無駄遣いですのでSDGsの観点からも褒められたものではないですね。。。
インターネットから拾ったハラスメント対策マニュアルのテンプレートを参考にしつつ、あなたのデイサービスで実用できるマニュアルに仕上げていきましょう。
ハラスメント対策マニュアルの作り方は後ほど、ハラスメント対策マニュアルの作り方でもう少し詳しく触れていきます。
1人が全ての権限を握っている
1人が全ての権限を握っていることも、ハラスメントが起こる原因になります。
権限とは例えば次のようなものを言います。
- 業務の割り振り
- 給与や賞与に関わる評価
- 人事権
このような権限を持つ人は例えば、会社役員・代表社員・管理者など組織図で言うところの上に位置するの場合が多いと思います。
こういった役職者のうち一人が全ての権限を握っている場合はハラスメントが起きやすい環境と言えるでしょう。
言葉を変えると独裁者という見方もできます。
1人の権限者に良い評価をされないとツラい業務ばかり与えられ、収入が増えず、望まない現場に異動させられることもあります。
権限者に気に入られるために職員同士でのハラスメントが発生したり、権限者から職員へのハラスメントが発生する原因となります。
職場内でのコミュニケーション不足
職場内でのコミュニケーション不足もハラスメントが発生する原因となります。
これは、言葉の受け取り方とも関連することになります。
あなたにとっては次の2人の人がいると思います。
- 普段からコミュニケーションが充足してる人
- 普段ほとんどコミュニケーションをとらない人
2人から全く同じ注意をされた場合、あなたにとって言葉の受け取り方は変わるはずです。
コミュニケーションが充足している人からの言葉は『指導してもらった、自分のことを見てもらえている』とポジティブに捉えることができます。
逆にコミュニケーションが不足している人からの言葉は『なんであの人からそんなことを言われなくちゃいけないの?』とネガティブに捉えると思います。
コミュニケーションが不足している職場では、言葉を発する側と受け取る側での言葉の意味のズレが大きくなります。
言葉の意味のズレが大きいことが、人間関係を悪化させハラスメントにつながっていく結果となります。
価値観の違いがあることを受け入れられない
デイサービスでは、様々な年齢・経験・スキルを持つ職員が働いています。
働き方も多様化していて、正社員・パート職員・契約社員・派遣社員と雇用形態も様々です。
様々な職員が働いていれば価値観の違いが生まれるのは当たり前のことですよね。
価値観が違うこと自体にハラスメントが起きる原因があるのではなく、問題は価値観の違いを受け入れられないことにあります。
実際にデイサービスで働いていると、次のようなところで職員ごとに価値観の違いが見られます。
- 働き方の優先順位
- 働き方の常識
- 仕事に対するスタンス
例えば仕事よりも趣味を優先したい職員がいれば、とにかく仕事が優先だと考える職員もいます。子育て世代であれば、子どもを何よりも優先に考えるでしょう。
すると「私の頃は、子どものために早退するなんて考えられなかった」と陰口を叩く職員も出てきます。
こうした価値観の違いによる職員同士の摩擦がエスカレートすることがハラスメントにつながっていきます。
デイサービスでのハラスメント予防方法に優先順位をつけて解説
ここからは、デイサービスでのハラスメント対策やハラスメントの予防方法に関してお伝えしていきます。
基本的には、先ほどまでお伝えしてきたハラスメントが起きる原因を解決していくことが予防方法になります。
何から手を付けたらいいかわかりやすいように優先順位をつけて予防方法を紹介していきます。
- 職場内でのコミュニケーションを積極的にとる
- 実用できるハラスメント対策マニュアルを作成する
- 権限を分散させる
- 多様な働き方があることを共有し理解する
デイサービスの現状によって予防方法の優先順位は異なると思います。
今回は、私がハラスメント対策に取り組み始めた時の優先順位をお伝えしていきます。
1.職場内でのコミュニケーションを積極的にとる
まず、一番最初にやることは職場内でのコミュニケーションを積極的にとることです。
やはり、コミュニケーションが不足していることは職員同士の摩擦を生んだり、言葉の受け取り方に相違がでたりと良い影響はありません。
言葉の意味が思った通りに届かないと、正直どんな対策をしたところであまり意味がありません。
ですのでコミュニケーションを積極的にとることは一番最初に取り組んでいくことをおススメします。
コミュニケーションを積極的にとることで次のようなメリットが得られます。
- ハラスメントと思われる言動を早期発見できる
- 不満など相談できることで、職員同士の摩擦を減らす
- 職員が「自分を見てもらっている」と感じる
デイサービスでハラスメントに関わる可能性があるのは職員だけではなく、デイサービスに関わる全ての人ということを認識しておきましょう。
例えば次のような関係を指します。
- 上司と部下
- 職員同士
- 職員とご利用者
- 職員とご利用者の家族
- 職員とサービス関係事業所
コミュニケーションに関して具体的にどんな対策をしていくかはデイサービスの内部(職員)と外部(ご利用者、ご家族、関係事業者)で分けて考えていきます。
ここで紹介できるのは一例なので、それぞれのデイサービスで取り組めそうな予防方法はどんどん取り入れてください。
デイサービス内部
- 定期的に職員面談の機会をつくる
- 上司も同じ空間で休憩する日をつくる
- 朝礼や夕礼で職種ごとの意見を言える場面をつくる
デイサービスの内部ではコミュニケーションをとるに越したことはないので、積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。
デイサービス外部
- 連絡しようか悩んだら連絡する
- しばらく顔を合わせていないと思ったら挨拶に伺う機会をつくる
デイサービス外部の方とはこまめな連絡や直接話す機会を適度に作ることでコミュニケーション不足を解消していきましょう。
2.実用できるハラスメント対策マニュアルを作成する
次に行うデイサービスでのハラスメント予防方法は、実用できるハラスメント対策マニュアルを作成することです。
デイサービスのハラスメント対策マニュアルには次のような項目を盛り込みます。
- ハラスメントの定義と事例
- ハラスメントの予防方法
- ハラスメント発生時の対応
ここで重要なことは、実用できるということです。
ハラスメント対策マニュアルは多くの自治体でもひな形を出しているので、それを元に作成していいでしょう。
ですが、自治体が出しているものはハラスメントが起きた場合の対応についてだけ記載されている場合があります。
大切なことはハラスメントを予防することですので、ハラスメントの定義や予防方法はマニュアルの中に入れておくようにしましょう。
デイサービスのハラスメント対策マニュアルの作り方などの項目でも詳しく説明していきます。
3.権限を分散させる
権限を分散させることも、デイサービスでのハラスメント予防につながります。
1人だけが権限を持っているとハラスメントにつながることは先ほどお伝えして通りです。
業務分担、人事考課する人を複数に分散しておくことで、一人の思考や偏見に頼ることなく正しい評価をすることができるようになります。
具体的には次のような人に権限を分散させるといいでしょう
- 介護主任やリーダー(現場の長)
- 管理者(デイサービスの長)
- 会社役員(経営者)
様々な視点からの評価が入ることで1人による圧力が無くなり、ハラスメントの予防ができるようになります。
権限を分散させることは、組織全体で取り組んでいくことなので状況によっては難しいかもしれません。
ですが、ハラスメント対策に本気で取り組むにはいずれ必ず必要になることです。
4.多様な働き方があることを共有し理解する
今の世の中は多様な働き方があって当たり前です。
そして人生100年時代と言われているこれからは、働き方はさらに多様化してくることが予想されます。
ハラスメントを予防するには「今は、多様な働き方があるんだよ」とデイサービスの職員に共有し理解してもらうことです。
ここに関しては、理解してもらえなくても繰り返し言い続けていく必要があります。
理解できずに、職員個人へハラスメント行為を行うような職員がいれば厳しく指導をしていく必要も出てくるでしょう。
そもそも多様な働き方が許されないのであれば、全員が同じ条件下で働くことになりますよね。
- 同じ勤務時間
- 同じ勤務日数
- 欠勤や早退できる条件も限定
こんな職場は、今の世の中であり得ないですよね。。
多様な働き方に関してあまりにも理解できないような職員がいれば、上記のようなことを説いてもいいかもしれません。
デイサービスのハラスメント対策マニュアルの作り方
ハラスメント対策マニュアルを作成する時のポイントは1つで、目的ごとにマニュアルを分けるということです。
【業務効率化に必須】あなたのデイサービスで実用できるマニュアル作成のコツとポイントをお伝えします。の記事でもお伝えした内容です。
ハラスメント対策マニュアルとして1つのマニュアルにしてしまうと重要な部分がかすんでしまいます。
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ハラスメントの何について作ったマニュアルなのか目的ごとに分けて作成しましょう。
ハラスメント対策マニュアルを作る目的は次の通りです。
- どんな行動や言動がハラスメントになるのか明確にする
- ハラスメントを予防するにはどうしたらいいのか明確にする
- 万が一ハラスメントが発生した場合どういう行動をとればいいのか明確にする
この3つの目的ごとにそれぞれのマニュアルを3つ作成することになります。
各マニュアルの名前は次のような感じで良いと思います。
- 各ハラスメントの定義と事例
- ハラスメントを予防するためのマニュアル
- ハラスメント発生時の対応
最低でもこの3つはそれぞれ別のマニュアルとして作成するようにしましょう。
ハラスメントの予防方法に関しては先ほどお伝えした通りなので、参考にしていただきながらマニュアルに盛り込んでみてください。
各ハラスメントの定義と事例、ハラスメント発生時の対応に関してもさらに詳しく解説したいのでお伝えしていきます。
4つのハラスメントの定義と事例
ハラスメント対策マニュアルを作成する時にまず最初に行うのは、各ハラスメントの定義づけと事例紹介です。
具体的にどういう行動や言動がハラスメントにあたるのかが分からなければ、対策のしようもありませんよね。
法律などで定義づけがされているものは、抽象的な言葉が入ってしまいますのでわかりづらさを事例で解消していくというイメージです。
今回の記事では、防止措置が義務化されているハラスメント+1の4つのハラスメントに関して定義づけと事例を紹介していきます。
- セクシュアルハラスメント
- パワーハラスメント
- カスタマーハラスメント
- マタニティハラスメント
各ハラスメントの定義と事例を解説していきます。
パワーハラスメントの定義と事例
パワーハラスメントの定義は労働施策総合推進法で定義づけされています。
パワハラ防止法とも呼ばれている法律ですね。
次の1~3のすべての要件を満たす場合にパワハラと認定されます。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
厚労省は、代表的なパワハラを次の6つの類型に分類していますのでそれぞれの分類ごとに事例をお伝えします。(パワーハラスメントの定義について参照 雇用環境・均等局 平成30年)
①身体的攻撃
- 指導に熱が入り、手が出た。
- 繰り返しミスをする部下に、ヘルメットの上から叩いた
- 指導に熱が入り、ものを投げてケガさせた。
- 後輩を蹴飛ばした
②精神的攻撃
- 「バカ」「ふざけるな」「役立たず」「給料泥棒」「死ね」と暴言を吐く
- 大勢の前、または大勢をあて先にしたメールで暴言を吐く
- 十分な指導をせず放置
- 個人の人格を否定するような発言で叱責
③人間関係からの引き離し
- ある職員のみを意図的に、会議や打ち合わせから外す
- 仕事を割り振らずに疎外する
④過大な要求
- 十分な指導をせず、過去に経験のない業務につかせる
- 自分の業務で手一杯なのに、他の職員の仕事を振られる
- 資料作成のために休日出勤を強いられる
⑤過小な要求
- 管理職を退職させるために、誰でも可能な受付業務につかせる
⑥個の侵害
- パートナーや配偶者との関係など、プライベートを詮索する
- しつこく飲み会に誘う
- 職場の懇親会を欠席する理由を言うことを強要する
セクシュアルハラスメントの定義と事例
セクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法で定義づけされていますので、引用しつつ分かりやすい表現に変えています。
セクシュアルハラスメントは次のように定義付けます。セクシャルハラスメントには「対価型」と「環境型」
「職場」で行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」
上記のような「性的な言動」に対しての労働者の対応によって
- 労働条件について不利益を受けたり
- 就業環境が害されること
同性に対するものも含まれます。
セクハラの事例について紹介していきます。性的な内容の発言と性的な行動に分けて紹介します。
①性的な内容の発言
- 性的な事実関係を尋ねる
- 性的な内容の情報(噂)を流す
- 性的な冗談やからかい
- 食事やデートへの執拗な誘い
- 個人的な性的体験談を話す
②性的な行動
- 性的な関係を強要する
- 必要なく身体へ接触する
- わいせつ図画を配布・掲示する
- 強制わいせつ行為
- 強姦
カスタマーハラスメントの定義と事例
カスタマーハラスメントは防止措置が義務化されていません。ですが、パワハラ、セクハラに次いで相談件数が多くなっているハラスメントでもあります。
(カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルによる)
カスタマーハラスメントの定義は難しく、クレームとの線引きが曖昧になりやすいです。
カスタマーハラスメントは一般的に次のように定義づけられています。
顧客や関係サービス事業者からのクレームのうち、過剰な要求や悪質なもの。
抽象的な表現がされ、カスタマーハラスメントの判断基準は各企業に委ねられているのが事実です。
ですが、カスタマーハラスメントと思われるような行為を放置しておくことは職員の精神的な負担にもなり職員の離職にもつながります。
これから紹介するような事例はカスタマーハラスメントに該当する可能性が十分にあります。
カスタマーハラスメントの可能性があることを念頭に置いて事実関係を確認するなどの対応をしていきましょう。
カスタマーハラスメントの事例は9つの型に分けて紹介していきます。
①時間拘束型
- 顧客等が職員を長時間にわたり拘束
- 長時間にわたり電話をする
②リピート型
- 理不尽な要望を繰り返し電話で問い合わせる
③暴言型
- 大きな声で怒鳴り声をあげる
- 「バカ」と言った侮辱的発言をする
- 人格否定や名誉棄損の発言をする
④暴力型
- 殴る、蹴る、叩く、ものを投げる
- わざとぶつかってくる
⑤威嚇・脅迫型
- 「殺されたいのか」と脅迫する
- 反社会的勢力とのつながりをほのめかす
- 異常に体を接近してくる
⑥権威型
- 正当な理由なく権威を振りかざし要求を通そうとする
- 執拗に特別扱いを要求する
⑦店舗外拘束型
- クレームの詳細が分からない状態で、顧客等の自宅や喫茶店に呼びつける
⑧SNS等での誹謗中傷型
- インターネット上で名誉を棄損する投稿をする
- プライバシー侵害の情報を掲載する
⑨セクシュアルハラスメント型
- 職員の体に触る
- 待ち伏せする
- 付きまとう
- 食事やデートに執拗に誘う
- 性的な冗談を言う
マタニティハラスメントの定義と事例
マタニティハラスメントは、男女雇用機会均等法台11条の2で定義づけされています。
女性労働者が妊娠や出産を機に産前産後休業や育児休業を要求したときに、上司や同僚から嫌がらせを受け就業環境を害されること。
マタニティハラスメントの事例は、妊娠から復職までの時期を3つに分けて紹介していきます。(マタニティハラスメントの起こらない職場づくり ハンドブック参照)
①妊娠~産前・産後休業前
- 切迫早産と診断され2週間休業したところ「皆に迷惑だし、会社は責任取れないので体を第一に退職したらどうか」と言われた
- 時間外労働の免除を申し出たところ「皆が残業しているのに、あなただけ特別扱いできない」と怒鳴られた
- 上司や同僚から「妊娠中はいつ休むか分からないから、仕事は任せられない」と嫌味を言われ、仕事を取り上げられた
- 身体に負担がかかる業務から簡易業務への転換を求めたら「楽な業務に移るなら、パートに変更になる」と言われた
②産前・産後休業、育児休業
- 産休、育休の取得希望をしたら「ウチには産休、育休の規定はないと言われた。妊娠したなら辞めてほしい」と言われた
- 妊娠の報告をしたところ「次回の契約更新はない」と言われた
- 産休、育休に入る時に「代替の社員を募集するから、復職しても席があるかどうかわからない」と言われた
③復職後
- 休業前と職務内容、労働時間が全く異なるポストに配置転換された。結果として減給降格となった
- 短時間勤務制度を利用したいと言ったら「フルタイムで勤務できないなら辞めてくれ」と言われた
- 短時間勤務で働いていると、同僚から「自分に勤務シフトが回ってくるのが早くていやだ」と繰り返し言われ短時間勤務をあきらめざるを得なくなった
ハラスメント発生時の対応
職場内で万が一ハラスメントが発生した場合の対応も事前に考えておく必要があります。
ハラスメント発生時の対応で事前に準備しておくことは次のとおりです
- ハラスメント対策委員会を設置する
- ハラスメント発生時のフローチャートを作成しておく
先にポイントを2つ説明しておきます。
ハラスメント対策委員は、できれば男性1名以上、女性1名以上の複数人で組むことをおススメします。
特にセクハラなどの被害は異性には相談しづらかったりしますので、男性も女性も入れるようにします。
そして、対策委員会の中の誰に相談してもいいよという雰囲気作りは必ず行なっておいてください。その理由は次の3つです。
- 人間関係によって相談しづらい人もいる
- ○○さんに先に相談しないといけないと思わせない
- 委員会の職員が加害者になっている可能性がある
事前準備を踏まえたうえで、万が一ハラスメントが発生した場合は対応をしていく必要があります。
ではハラスメント発生時の対応について説明していきます。
私のデイサービスで使用しているハラスメント発生時のフローチャートと聴取表のword文書も添付しますので参考にしてみてください。
ハラスメントの発見
まず初めに、ハラスメント行為の発見をすることになります。
デイサービスでのハラスメント発見の経路は次のようなものがあります。
- ハラスメントを受けた職員本人からの発信
- ハラスメントを目撃した職員からの報告など
- ご家族やご利用者からの報告
まずはこの段階で、ハラスメントが発生しているかもしれないと思って初動をしていきます。
ハラスメントの発見の段階では、相談者から情報の聞き取りを行なっていきます。
- 相談者本人の了承を取ったうえで、聴取表に記録を残す
- 相談者が被害者本人の場合は、相談者の求める援助がなんなのか把握する
- 相談者にこれからの解決方法のこれからの手順や当面の対処の仕方を助言する
次に必要な対応が事実関係の確認です。
事実関係の確認
事実の確認からは、特に慎重に行なっていく必要があります。
特に、ハラスメントの被害者や加害者の名前を出してしまうと業務にも支障を与える事態になります。
まずは、デイサービスのハラスメント対策委員会の中で情報の共有を行います
最初に相談を受けた内容を整理したうえで次の3者からヒアリングを行うようにしましょう。
- 相談者(被害者を想定しています)
- 加害者とされた者
- 同僚などの第3者
事実関係の確認を行う時には、あくまでも中立的な立場でヒアリングを行うようにします。
誰かを悪者と決めつけてヒアリングに臨むようなことは避けましょう。
また、第三者にヒアリングをする時には、守秘義務を十分守ってもらいながら、必要最小限の人数に絞ることを心がけましょう。
ハラスメントの事実が確認された場合
ヒアリングなどの結果から、ハラスメントの事実が確認された場合の対応をお伝えしていきます。
対策委員会や必要に応じて経営者なども含めてデイサービス(法人)としての対応を検討します。
会社などの法人としての対応は就業規則などにもよるので一概には言えませんが、次のようなことはフォローアップとして必ず行うようにしましょう。
- 雇用管理上の措置
- 相談者への対応の説明
- 就業規則に基づく加害者への処分
- 職場環境の見直し
- 再発防止の徹底
必要によっては、相談者または加害者の配置転換なども行わなければいけないかもしれません。
残念なことではありますが、加害者への何かしらの処分も必要になります。
ハラスメントの程度によって、けん責・出勤停止・懲戒解雇などツラい選択をすることも出てきます。
そして何よりも大事なことは、相談者への経過の説明と再発防止策の徹底です。
次はデイサービスでのハラスメントは絶対に起こさないという強い意志を持って再発防止に臨んでいくことになります。
ハラスメントの事実が確認されなかった場合
デイサービスでのハラスメントの事実が確認されなかった場合でも、対応を進めることになります。
職場環境の見直しやハラスメントと思われる行為の再発防止徹底は事実が確認された時と同じように行なっていきます。
被害者とされた職員や加害者とされた職員への説明も十分に行うようにします。
- 会社として事実確認のなかで取り組んだこと
- 加害者とされた者の言動のどこに問題があったか
- 改善できるかの確認
また、デイサービスの中で同じようなことが起こらないように管理者などの役職者は職員の言動に目を配っていくようにします。
コミュニケーションを積極的にとっていくことも効果的ですので引き続き予防にも取り組んでいきましょう。
まとめ
今回は、デイサービスでのハラスメント対策についてお伝えしてきました。
ハラスメント対策はスタッフを守ることが最重要な目的となります。
デイサービスでのハラスメント対策には次の予防方法が有効だとお伝えしてきました。
- コミュニケーションの活性化
- 実用できるマニュアルの作成
- 権限の分散
- 価値観の違いを共有する
マニュアルの中では、ハラスメントの定義や事例も掲載するようにしましょう。
デイサービスで万が一ハラスメントが発生した場合にも、慌てることのないように2つの準備をしておきましょう。
- ハラスメント対策委員会の設置
- ハラスメント発生時のフローチャートを作成
それぞれのデイサービスで適切にハラスメント対策を行うことは、スタッフが働きやすい職場を作ることにもつながります。
デイサービスのハラスメント対策が定着するまでは時間がかかるかもしれませんが、一つずつ確実に取り組んでいきましょう!